File 3. JS Standard

さて、今回は話題のシェーパー、ジェイソン・スティーブンソンのJSスタンダードのインプレです。アンディー・アイアンズが乗っていることで知名度は最高潮ですが、他にもブルース・アイアンズ、ディーン・モリソン、ルーク・イーガンなど実力派ライダーが乗っていることもあり、今最も注目度の高いシェーパーと言っても良いかも知れません。

この板は、良い意味で期待を裏切ってくれる、とても面白い板でした。

実際に乗ってみてまず感じたことは、ミステリアスな板、というフィーリングでした。期間も回数もかなり乗っていますが、まだこの板のベストなライディングスタイルをつかんでいるかどうか、定かではありません。しか〜し!そのあたりの奥の深さが、僕的には面白くてたまりません。板の判断は人それぞれですが、僕は、ものにするまでに時間がかかる板が案外好きなのです。これってどう扱うものなんだろう?と色々と試しているうちに、自分のライディングの幅も広がったりします。その意味では、かなりハマりました。ってか、今でもハマってます。

ジェイソン・スティーブンソンと言えば、ダレン・ハンドリーのもとで修行したことで知られ、一般に板の特徴も似ていると言われます。実際に各部のディメンションを計ってみても、確かにアウトラインは似ているんですが、微妙に違う部分があります。そして、実際に乗ってみると、かなり違う板なんじゃないの?と感じます。

パドルを開始すると、薄さの割には浮く板だな、、、という感じがあります。ですが、DHD同様、パドルは特に早くもなく遅くもなくという感じです。ただ、後で詳しく書きますが、テイクオフはコツが分かってくると結構良い感じです。

立ってからの加速性もトップスピードも、DHDよりも速く感じられます。これだけでも凄いことなのですが、特に踏み込んだ時の一瞬の加速は特筆すべきものがあります。加速の仕方は板によって様々で、ムニュっと柔らかく前に出るものもありますが、JSの場合はライダーが伝える力を逃がさず、瞬発的にスコーンと前に出ます。ワンプッシュで得られるスピードや距離は、僕が今まで乗った板の中でも最も優れた部類に入ることは間違いありません。予想以上に出てしまい、とまどってしまうことすらありました。テイクオフ直後に、進行方向にピークが出現してしまって、良し!あそこにちょこっと引っかけて抜けよう!と思って踏み込むと意外にもピークの向こうまで抜けてしまって、アレ?行き過ぎ!てな感じです。

普通一般の平均的な板と比較して、力が逃げない、というのは顕著に感じられます。スルスルとずれることで旋回するタイプの板ではなく、カチッとレールをセットして、しっかりした体重移動で乗る板のような気がします。

最もDHDと違うと感じられたのは、スタンスの取り方でした。DHDはフロントフッターからナチュラルフッターをカバーする板ですが、同じようなスタンスでJSに乗りと、直進性が強く、ドライブはスゴイけど思ったように曲がってくれない板という印象を受けるのではないでしょうか。これまでにアンディの影響などからJSを買ってみたものの、乗りこなせなくて手放してしまった、という人も案外多くいるんじゃないかと思います。

板を観察するとDHDとの違いがはっきりと分かります。レール下部を指でなぞってみると、DHDよりもレール下部とボトム面との接点がよりシャープな感じになっているのが分かります(極端な言い方をすれば、角張った、という感じでしょうか?)。このシャープな感じは、うっすらとノーズ側から取ってあり、ちょうど前足を置くセンターのワイドポイント付近で最も強くなっています。ひょっとしたら、前荷重で乗ったときの直進性の強さとスピード性は、このあたりのデザインと関係があるのかも知れません。

DHDと言えばセンターに厚みがありノーズとテールが均等に落とされている感じですが、JSはノーズ側のボリュームが薄くよりシャープにな感じで、テール側は逆に微妙にDHDよりもボリュームが厚くなっています。アルメリックのシェープに代表されるように、胸元にボリュームを取ってテイクオフを早くするなど、比較的板の前方にボリュームを取るのが最近の傾向です。ですが、JSの方向性はまるで逆のように思えます。また一般に、テールの厚みが薄い板の方が、よりイージーな入力でターンに入れると思うのですが、JSのシェーピングはDHDよりもテール側に厚みのバランスがあり、実際の乗り味も、同程度の入力では、DHDほど動きは軽くありません。

ところが乗り込んでいくうちに、だんだんとスタンスが分かってきました。どうも重心をやや後ろ気味にして乗ってみると、ドライブ性と回転性を両立した過激に調子良い板に大変身するようなのです。

鋭角なターンしようとするとき、普通はターンの後半でテールが波に深く食い込み、そこで微妙にパワーを食われることがありますが、このボードの凄いところは、ライディングの過程でテールが強く水に差し込まれることがあっても力を食われることがなく、逆にかえってそこから上に向かって一気に反発力を得られることです。またスルスルと動くルースなボードでは、ターンのときにパワーが推進力に結びつかない傾向がありますが、JSの場合、逆にターンによって強く加速するようなフィーリングがあります。

板になれるまでにだいぶ時間がかかりましたが、バランスを修正して板の習性を生かしたライディングが出来るようになると、切れの良いボトムターンから強烈な飛び出しを体験できます。アレ?っと思うスピードでノーズがスポーンと波のトップから突き出るのを味わうのは快感です。

この加速力はトップでも得られるので、乗り方が分かってくると歯切れの良いハジけたライディングができますが、意外なスピード性と直線性をうまくコントロールするには、ちょっとしたコツが必要です。

これまでやや前寄りに重心をキープして乗っていた人は、重心を後ろめに移動することで動きの自由度が増します。ただ、常に後ろにキープするんじゃなくて、波によって前にステップしたりすると良いでしょう。クローズセクションを抜けるときは前でプッシュし、角度のあるターンを入れたいときはある程度後ろ寄りのスタンスで、といった感じです。それから、ワンプッシュで前に出る距離が大きいので、ターンに入る前にしっかりとボトムに下りきって下から狙っていかないと波のカールから離れてしまうかも知れません。

また、フィンをFG-5やGYUなど、ある程度回転性の高いものに変えるのも面白いです。こうした回転性の高いフィンはもともとルースな板に付けてもありがたみが良く分かりません。ですが、JSでは強いドライブ性に回転性がプラスされてバランスが良くなりました。逆にGAMやGRなどのドライブの強い大きめのフィンもグリグリ走ってくれて面白いです。ドライブがより強力になって、それなりにサイズのある波でトップターンが成功すると豪快なスプレーが飛ぶので、快感です。

パワーを逃がさない板なので、最初、慣れるまでは「足に来るボードだな〜」という感じがありました。ターンのときの力をロスしない分、ルースにクルクルと動いてしまうボードよりも足にかかる負担は大きい気がします。ですが、スタンスが合ってくると徐々にそういったことは意識しなくなります。最初は、しっかりした体重移動で大きなラインを描くようなボードなんだろうと思っていましたが、これもまたスタンスを変えることでかなり素早いスナップもできることが分かってきました。アンディは、比較的上体を起こして、前後の荷重をメリハリ良く配分して乗っているように見えます。そんなスタイルがお手本になるかも知れません。

最初のうちは、板に負けないように強くプレッシャーをかけるような乗り方をしていたのですが、乗り込むにつれてスタイルを変えました。レールをカチッとセットし過ぎると、強烈なドライブで意図しないところへ連れて行かれることがあります。そうならないために、軽いタッチで乗ってみると動きも軽くなり、ラインの自由度も増しました。そんな軽いタッチでも、ターンから十分に強い飛び出しを得られるのは不思議です。リラックスして乗った方が調子は良さそうです。

同じくJSのライダーであるディーン・モリソンは小柄な割に技が大きく、ドライブの効いた綺麗なカービングをします。WCTでポイントを稼げるかどうかは別として、カービングの大きさ、綺麗さ、力強さは一級品です。こんなスタイルを目指すなら、ある程度前荷重で乗って、より長い時間レールを差し込んで乗った方が良いかも知れません。これもまたJSのドライブの強さを生かしたライディング方法の一つだと思います。

さて、ちょっと話を戻して、テイクオフについてです。僕が乗っているのは、まんまAUS仕様で特に日本仕様にロッカーを変更したりはしていません。ですが、慣れてくるとそれなりに良い感じでテイクオフできるようになります。ノーズが薄いことで、胸をピッタリと伏せたときの重心が、より低い位置に来ます。そのせいでボトムに向けて突っ込んで行くときにノーズを落とし込みやすいのです。これにはちょっと慣れが必要ですが、ノーズをギリギリまで下げてテイクオフするときの早さは、なかなかのものです。楽さでは、ノーズに厚みを取っている板には全然負けますが、つかまえられる波数などは、やり方次第では全く引けを取らないと思います。

ノーズが薄いのは単にリップアクションを軽くするためか、ライダーの荷重をテールに集中させて、ピンポイントのタイトなターンを狙ったのか、厚みのバランスを変えてテールが入水したときの反発を強くするためか、、、、と色々な憶測が可能ですが、もし、ジェイソン・スティーブンソンがこのあたりのテイクオフの体勢のことまで計算に入れていたとすれば、恐るべしJSといったところでしょうか。真相は定かではありません。

ノーズロッカーについても、少しコメントしたいと思います。ノーズロッカーは弱い方ではないのですが、ノーズの薄さのためか、ある程度サイズがあるジャンクな波で、荷重を前寄りにして乗ると、突き刺さる確率が高いです。後ろめにスタンスを取ることで、これは解消されますが、それにしてもノーズロッカーをいじって、AUS仕様より下げてしまうことは避けた方が良さそうです。またJSはタダでさえ乗り方次第では直進性が強くなってしまいます。その意味でもロッカーを下げるのはちょっとヤバそうです。

色々と書きましたが、スタンスを後ろ寄りにすることに違和感を感じるサーファーは多いと思います。経験あるサーファーで、長いことスタンスを前にして乗っている人も違和感を覚えるかも知れませんが、特に初心者〜中級者の人達にとって、重心の位置を後ろに移動するのは、意外に勇気が要ります。後ろ寄りに荷重して、どうやって加速するんだ?という疑問が浮かぶかも知れません。このあたりは、いずれ「やっちゃってみる?」で取り上げてみたいんですが、重心は後ろでも荷重は前にかけられます。

ビデオなどで、プロライダーが比較的急な斜面を下りるときに、後ろヒザをたたんで、おしりの位置をよりテール側に少し近づけたような体勢で乗っているのを見たことがないでしょうか?ちょっと部屋の中で実験して欲しいのですが、普通にライディングのスタンスを取ってみてください。前足は普通に床の上に置きます。後ろ足だけ、何でも良いのでちょっと高い段差を見つけて、その上に置きます。ちょうど傾斜のある波を下っているようなイメージです。それから、後ろヒザを前足よりも大きく曲げて、腰の位置を、より仮想上の水面に近付けます。どうでしょう?これだけで前足に荷重が集中しているのが感じられると思うのですが、ここで、今度は後ろ足を伸ばしてみてください。そうすると前足の荷重も抜けますね?この動作は、両膝を寄せてクローズスタンスにすると、より分かりやすくなります。というか、クローズスタンスそのものが、ここではとても重要です。ヒザを内側に寄せることで、足の角度が腰から前足に向かって斜めになり、傾斜の付いた波の上では、ちょうど効率よく体重を伝達できる角度になるからです。このクローズスタンスのまま、前ヒザの曲げ伸ばしをしてみてください。もちろん、後ろ足は高いところに乗せたままです。どうですか?良い感じに力がかかりませんか?

さて、今度は平らな床の上で同じように荷重のテストをしてみます。後ろ足を深く曲げると、後ろ足にかかる力が大きくなり、まるで後ろ荷重になってしまっているように感じられます。前荷重をするためには、腰の位置を前にしたり、胸を大きくかぶせたりするしか方法がなさそうです。ただし問題は、実際に傾斜の付いた波の上でやると狙いに反して、前に加重されていない場合があることです。

さらに、腰の位置を前に移動し過ぎてしまったり、胸をかぶせ過ぎたりしてしまうと、前後のメリハリある重心の移動ができなくなり、場合によっては、不必要なところで板の動きが重くなるおそれもあります。

胸をかぶせたり、腰の位置を前にするのが良くない、ってことではないんです。事実、有名なプロライダーの中にはミック・ファニングのように胸を大きくかぶせていたり、タジ・バロウのように腰の位置を比較的前めにセットしているサーファーが沢山います。テイラー・ノックスも比較的胸をかぶせた感じで乗っています。そしてどのサーファーも最高に格好良く、素晴らしいライディングを見せてくれます。

ライディングのために、全身のあらゆる部分を利用するのは良いことです。逆に力を抜くことがベターなこともありますし、何が最も良いかはケースバイケースで異なり、決めるのは難しいです。ただ、いったん前に預けた重心がずーっと前になったまま戻らなくなるようなスタイルは、ちょっと注意が必要です。多くのプロライダーが、臨機応変に色々なスタイルを取りますが、決して一点に固定して動けなくなるような体勢は取らないはずです。なので、前に伏せてるプロサーファーを見ても、今回説明している荷重の仕方とは別の次元で必要とされている動きをしているんだ、と思ってもらえればオッケーじゃないでしょうか?

後ろ足のたたみ方を大きくする方法では、ボトム面に達したら床と同様に後ろ荷重になっちゃうんじゃない?という心配もあるかも知れません。でもそのときには、今度は上に向かう旋回の体勢に入って行くわけですから、ターンの後半で自然と荷重がテール寄りに変化するくらいでちょうど良いのです。いつまでもフロント寄りに体重を預けっぱなしにていたら、切れのあるターンなんてできません。強い踏み込みによって強烈なドライブは得られると思いますが、上にあがる角度はそれほど取れないはずです。

話がだいぶ逸れてしまいました。いつも残念に思うのは、板に取扱説明書がないことです。いつもいつも板によって乗り方が相当違うことには驚かされます。なのに買ってみなけりゃ分からなかったり、買う前の説明が不十分だったり、買った後のフォローがなかったりするのは、なぜ?説明書がないなら、売る側には板を熟知していて欲しいです。だって、それってカーディーラーの営業さんが車のことを知らないで売っているのと同じですから。乗り方を変えることで豹変する板だったのかも知れないのに、高いお金を払って、コノ板ダメだわ....ということにもなりかねません。

JSスタンダードは、僕にとって、とっても挑発される板だったのですが、実際のところ、どうなんでしょう?他の人も僕と同じように板に合った乗り方を見いだす楽しみを味わえるのでしょうか?そのあたりは本人にしか分からないところだと思います。

板の選び方として、自分に合った板を見つけるのも手なのですが、逆に板から学ぶ、ということもあります。僕にしてみればJSは本当に楽しい板です。今までで最も多くのことを教えてくれた板と言えば、このJSとウェバーです。どちらも全く性格の違う板で、全く違った楽しさがありました。

そうそう、話は変わりますが、最近ライ・クレイクというサーファーが現れました。19歳という若さです。ケリースレーター&ヤングガンズというDVDで初めて見たのですが最高にパンチがあってブチ切れたライディングをします。当てる、飛ぶ、回る、何でもござれです。いずれ発売されるDVD、ドライブ・スルー・ヨーロッパでケリー・スレーターらと共に各地を旅しています。毎月購読しているトランスワールド・サーフの英語版によれば、このDVDはかなり面白そうです。

このライ・クレイクがウェバーに乗っています。ウェバーは非常にルースでありながらターンも切れる板という印象が僕の中で強いのですが、スタンスはJSとは全く異なり、どちらかと言えば前乗りタイプです。ライ・クレイクのライディングをチェックすると、主に若干ですが前気味に乗っていて、特に素早くスナップするときや、鋭角にターンするときだけ、ステップバックして後ろ足をデッキパッドのテールブロックにセットしているようでした。今回の説明を読むと、ウェバーはルースな板で、JSの方がキレは鋭いのかな?という印象を持つ方もいるかも知れませんが、ライ・クレイクのライディングを見ると、そんなイメージは一蹴されてしまいます。ウェバーの場合は、前めに乗ることで強い爆発力が得られます。後ろ足を最後部にセットすれば、素早いスナップ、と非常に乗り方の幅が広いのです。

JSの場合はその逆で、どちらかというと、後ろ足の定位置はデッキパッドの最後部で、波がトロかったり、クローズセクションを抜けなければならない場合にのみステップして前に移動する、という感じです。ターンが決まったときの爆発力はすごいですが、スタンスのセットやターン自体が初心者にとってはイージーではない面があるように思われます。ポテンシャルは非常に高く、ヤバいボードですが、このヤバさを引き出せるかどうかは、ライダーにかかっていると思います。ただ、別にポテンシャルを引き出せなきゃ乗っちゃいけない訳じゃないんですね。それはそれで、乗りながら引き出していけば良いんで、本当は板の性能をフルに引き出している人の方が少ないのかも知れません。フィットするスタイルを探しながら試行錯誤するのが好きな人にとっては、面白くて仕方ないボードになる可能性大です。いずれにしても、チャレンジャー指向の人に向いている板なんじゃないでしょうか?

むかし、僕が中学生だった頃、「やれるもんなら、やってみろ!」って言ってやられちゃった先生がいました......ま、そんなことはどうでも良いんですが、チャレンジもほどほどにね (;´∀`)

(2005/2/11)

 

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