File 6. Al Merrick MBM

今回は、世界中で最もポピュラーなブランド、アルメリック(チャンネルアイランド)のMBMです。以前から、アルのインプレはやらないんですか?という問い合わせをいただいていましたが、本音でやっちゃいますよっ!

なぜ今MBM?と思う方もいるかも知れませんが、とりあえず僕自身乗ったことがなかったですし、MBMに乗る複数の人からの情報で、非常に調子がよいと聞いていたのです。それに、チャンネルアイランドのHPに「今現在、プロレベルのサーファーに最も広く愛用されるモデル」とあり、今やMBMは、アルを代表するモデルの一つになっているようなのです。

今回使用したのは、AUSシェープのMBMです。過去にカリフォルニア、ハワイ、オーストラリアのKボードやKスモールに乗りましたが、僕自身は特に性能的な差は感じたことはありません。

板の特徴を見てみると、アルの典型とも言える、弱いノーズフリップ(先端の返し)が目に付きます。ノーズフリップが弱いので、ロッカーも非常に弱く見えるのですが、ある程度のロッカーが付いています。それにしても、一般的に見て、このMBMは、ノーズ、テールともにロッカーが弱い部類に入ることは間違いないと思います。

テールブロックの幅が非常に広いのも、MBMの特徴だと思います。平均的な板と比較すると、明らかにごっついボリュームがテールに見られます。

この板には、サイドフィンのちょい上あたりにバンプがあり、そこからテールブロックの先端に向けて、一気にアウトラインが絞られています。上の写真からも、サイドフィン付近からテール先端までが、直線的なラインになっているのが分かると思います。絞られていて、この幅(ブロックの幅が広い!)ということは、テールブロックだけでなく、もとの絞り込む前のアウトライン(センターからバンプにかけて)も幅広ということになります。後で書きますが、このへんのデザインが、弱いロッカーと相まって、爆発的なスピード性を生み出しているようです。

以前乗ったことのあるKボードにもこのバンプが付いていましたが、ノーズフリップ同様、このバンプも、アルの板に広く採用される典型的なパターンの一つのようです。ここ数年間にリリースされた板の多くに、絞り込み度合いの違いこそあれ、このバンプが採用されています。このMBMは、そういったデザインの集大成的な位置付けの板になるのかも知れません。

このバンプには、板をルースにし、回転性を飛躍的に高める効果があります。特にトップでは、クルンと板が回ります。初めてKに乗ったときは、このバンプが非常に新鮮で、回転性の高さには驚いたものでした。また、センターのワイドポイントからバンプまでのアウトラインを広めに取ることができるので、結果として波のパワーを受け止める面積を大きく取ることができます。それによってスピード性と回転性を両立できる、というメリットもあります。

特に、ノーズ、テール共にロッカーが強くないMBMにおいて回転性を確保できているのは、紛れもなく、このバンプのおかげだと思われます。ただし、回転の仕方が、ややテール付近のパワーを逃がす感じで回って行くような感覚があるので、バンプのない、一般的なアウトライン(一本の曲線がテールに向かうアウトライン)の板に乗り慣れている人では、若干違和感を覚える人もいるかも知れません。

MBMのターンのフィーリングは、どちらかと言えばキレる感じよりも、回る感じに近い気がします。もちろん、乗り手の板の動かし方によってもターンのフィーリングは違ってくるかと思いますが、バンプによる回転には、独特なルース性があります。ケリースレーターが、同じくバンプを持ったKボードでトップターンをするときに、素早くスムーズにクルンと回るのを見たことがないでしょうか?あの感じが、バンプを持つ板の典型のようです。

レールも、一般的なアル同様、比較的ふっくらしたミディアムボキシーくらいの感じです。よく、海外のサイトなどを見ていると、板を説明する言葉で、forgiving(フォーギビング)という言葉が使われます。許す、という意味のforgiveから来る言葉ですが、許容範囲が広い、対応範囲が広い、動きの自由度が高い、くらいの意味合いになると思います。アルのレールも、全般に実にフォーギビングなものが多いです。この手のふっくらしたレールには、適度な浮力によって板に動きやすさを与えたり、パワーのないセクションでもある程度走ってくれたり、ジャンクな波でも引っかかがない、などのメリットがあります。

逆に、体重のない人や脚力のない人がオーバーフロートで乗るとレールを入れにくい、切れるようなシャープなターンやえぐるようなターンをする場合は、しっかりした体重移動が必要、ということもあります。また、根本的にシャープな薄いレールを持った板でキレのあるターンをしたいという人には、ややソフトな、鈍いフィーリングに感じられることもあるかと思います。世界中のサーファーに支持されるアルメリックですが、このあたりは、メリット、デメリットを含めて、乗り手の好みが大きく分かれるところだと思います。

乗ってみて、まず感じられるのは、MBMのテイクオフの早さです。これまでに「この板どうよ?」で取り上げた中では、ウェバーのタジモデルが最もテイクオフが早い感じでしたが、それに勝るとも劣らないものがあります。ただ、この2つの板を比較すると、テイクオフ時のフィーリングは、かなり違います。タジモデルにはある程度のロッカーがあり、ノーズフリップもしっかり付いていますから、テイクオフが早いとは言っても、ノーズを落とし込んだり、板のボトム面を波の傾斜に合わせたりと、最低限のテクニックは必要です。対するMBMは、ほとんどテクニックを要することなく、どんな人が乗っても、非常にイージーにテイクオフしてくれそうな感じです。このことは、特にパドル力やテイクオフに自信のない初心者や、混雑したポイントで波を取りたいサーファーにとっては、非常に強力な武器になってくれそうです。

テイクオフだけでなく、加速も強力です。これもまた、テイクオフにおけるウェバー、タジモデルとの比較同様、テクニックを要することなくグングン走って行きます。何もしないで立っていても、スピード性のない板をプッシュして加速するのと同等かそれ以上ではなかろうか?と思えるほどの爆走性を見せてくれます。

この豪快なスピード性は、ノーズ、テールともに抑えたロッカー、幅の広いテールブロック、さらに幅の広いセンターからバンプまでのアウトラインが、しっかりと波のパワーを受け止めることから得られるようです。特にバンプより上の幅は、同じバンプを持つKボードなどと比較しても広く、より波のパワーをとらえて、強力な推進力を得られるデザインになっていることが分かります。

逆にここまでスピード性がイージーだと、板に依存することなくテイクオフや加速の腕を磨きたい人には、どうなんだろう?という疑問すら感じられます。波のコンディションを選ばず調子が良い、とか、スピード性が高い、という話は聞いていましたが、確かにそれは言えていると思います。

ターンについて、少し書きたいと思います。上にも書いたように、テール付近の両サイドのバンプは、スピード性と回転性を両立させる優れたデザインでもあるのですが、板のアウトラインが、特定のポイントで急激に変化してしまうことで、板のカービング性能には、独特の特徴があります。

センターのワイドポイントからバンプにかけてのアウトラインの幅が広い、ということは、言い換えれば、板のサイド部分、特に前足付近のアウトラインがストレートに近い、ということになります。このストレートな部分はスピード性にとっては好条件ですが、ほとんどの動きを前足のリードで持って行く典型的なフロントフッターにとっては、ひょっとしたら扱いにくく感じられる可能性もあります。例えば、比較的アウトラインのカーブがきつい板に乗り慣れている前足重視のサーファーが、テイクオフ直後からレール全体を差し込んで、縦にボトムへ下って行くとします。普段なら前足付近のアウトラインがほど良く反応して、綺麗なカービングを描きながら狙ったポイントに板を運べるのに対し、MBMでは前足付近のアウトラインがストレート過ぎて、いつもと同じ荷重の仕方で下って行っても、板が旋回を開始せずに、そのまんまスコーンと下に走って行ってしまう、ということもあるわけです。

バンプを持つ板は、いったんバンプが反応してくれれば、回転性は良好ですが、バンプが反応した場合と反応しない場合で、回転性の落差が大きい、ということも言えます。そのため、前側のレールでカービングしたいサーファーにとっては、ストレートなサイドのアウトラインが、かえって裏目に出てしまうこともあるわけです。

バンプの反応は、ある程度乗り慣れればコントロールできるようになり、全く違和感なく乗れると思いますが、極端な前足荷重のサーファーで、特に前足部分のレールを使う頻度が高く、ライディング全般を通してレールを長く差し込んでフルレールで乗るタイプの人に取っては扱いにくく、動きが硬く感じられるおそれもあります。逆に、ターン時に、よりテール寄りの荷重で乗る人にとっては、加速と回転をうまく引き出しながら、テールの素早いスナップなんかも楽しめそうです。

乗り方としては、弱いロッカーとストレートなアウトラインを生かしてバンバン加速し、狙ったセクションまで板を運んだらテールのルース性で一気にターン、という感じでしょうか。

スピード性が高いので、コンディションの良くない波やパワーのない波でもバンバン走りますし、セクションを乗りつなぐのも比較的イージーです。また、抜けにくい速い波でもかっ飛んでいけるので、対応範囲はかなり広いように思います。

以前、ネットでカラニ・ロブがUS Open of Surfing 2002で優勝したときのウィニングライドをビデオを見ましたが、非常にショボいジャンクな小波であったにも関わらずバンバン乗り継いで技を連発していたのが印象的です。おそらく、そのときに乗っていた板が、このMBMだったんじゃないだろうか?と思います。

強いロッカーの板に乗り慣れている方にとっては、ちょっと乗り味がフラットに感じられたり、ポケットでのフィット感が希薄に感じられるかも知れません。また、先ほど書いたように、前足のリードでフルレールのカービングをするタイプのサーファーも若干違和感を感じるかも知れません。とは言え、どの板にもそれぞれ個性があり、全てのライダーの要求を満たす板、というのはなかなか難しいものがあります。ですから、そのあたりは、ご自分の好みやスタイルと照らし合わせた上で、自分が板に求めるものを良く検討して選択するのが良いかな?と思います。

いかがでしたでしょうか?世界で最もポピュラーなシェーパーの定番とも言えるMBMですが、性格は極めてはっきりとしている気がします。コンディションやサーフィンのレベルを問わず、とにかくよく走りる板を探している、という人には、まさにうってつけの板かも知れません。やはり、中〜上級者になってくると、レールの厚み、アウトライン、ロッカーなどで好みが大きく分かれるところかと思いますが、このインスタントなスピード性が、多くのサーファーに支持される理由なのかも知れませんね。

(2005/5/11)

 

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