File 8. DHD Parko Model

以前から気になっていたモデル、DHDのパーコモデルに乗りました。ジョエル・パーキンソンと言えば、温厚な癒し系のスマイルが印象的ですが、これまでのWCTにおける成績は凄まじいものがあります。WCTにデビューした2002年にいきなり世界ランキング2位を獲得し、2004年にも再度、ランキング2位となりました。ただし二度目のときは、娘の誕生のためにWCTを2回も欠場していながらの2位ですから、単なる普通一般の2位とは、かなり違います。2回分のポイントがゼロだったにも関わらず、総合で2位だなんて、全イベントを必死に戦い抜いた他の選手にしてみれば、どういうこと?って感ですよね。いかにコンスタントに高いポイントを稼いでいたかが分かります。

過ぎ去ったことに対して「もし」の話をするのはいかがなものか?というのもありますが、敢えて、欠場した2イベントのうち、1イベントでも出場していて、少しでもポイントを稼いでいたら?あるいは、残り数秒でCJに逆転を許してしまった部原のクイックシルバープロで優勝していたら?と考えると、おそろしいものがあります。これらの「もし」のいずれかが実現していたなら、おそらくタイトルは、非常に高い確率でアンディ・アイアンズのものではなく、パーコのものだったに違いありません。

ブルーホライズンという映画では、勝つことに執着するアンディのコンペティティブな側面が描かれていますが(とある雑誌のインタビューによれば、本人的には、描写が偏っているという不満があるようです)、パーコを見る限り、必ずしもコンペティティブな性格の持ち主が、常にコンペで勝つわけではない、と感じさせてくれます。

今回は、そんな癒し系スーパーサーファー、ジョエル・パーキンソンの乗るDHDパーコモデルの秘密を探るべく、テストライドを敢行しました。

板のアウトラインは、僕が入手した英文のDHDのカタログによれば、スタンダードと比較すると、センター付近が深くなっているシングルダブルコンケーブで、ボード全体のボリューム感が微妙に大きく、かつノーズ幅は微妙に広く、フィンの手前のアウトラインが僅かに直線的になっており、ロッカーはノーズ寄りに強く、テール側は抑え気味である、とのことでした。ただ、その差は、板を眺めてみたり、測ってみたりしても、顕著には分からない程度の微妙なものです。それに、シングルダブル、となっていますが、僕がゲットした板はシングルコンケーブです。この板のみでなく、今現在流通しているパーコモデルは、おそらくシングルコンケーブが主流であるように思います。プロモデルの板は頻繁にリファインされることもあるので、このことに不思議はないでしょう。今後もシェープの変更はあり得ると思います。

実際にパドルアウトしてみると、確かにスタンダードやミックモデルよりも浮力感があり、ハッキリと分かる程度の違いがあります。パドル自体も少しラクチンで、テイクオフも先の2本より早い気がします。ボリュームにしても、アウトラインにしても、そんなにものすごくは変わらないのに、不思議です。見た目上からは読みにくい部分にきちんと手が入っているんだと思います。こうした浮力感にもかかわらず、他のモデルと比較して特にレールがボッテリしていたり、フロートが強くて差し込みにくかったりすることはなくて、他のDHDのボリューム感でちょうど良い人にとっては、扱いやすいレールだと思います。

パドルにしても、ライディングにしても、この板は、総じて他のモデルよりも安定感が高いということは言えそうです。決して幅のあるディメンションで乗ったわけではないですが、パドル時に左右に振られる量も少ないですし、ライディング中もほど良い安定感があります。

この板のすごいところは、そういった安定感にもかかわらず、動きはとても良好である点です。普通は、良く動く板はコントロールもシビアであったり、安定感が強い板では動きも重かったりすることが少なくないんですが、まるで動きの良い板からシビアなテイストだけを取り去ったような感じです。ダシはしっかりと出ているのに、アクは取り除かれた上質なビーフシチューのよう、と言えばちょこっと分かっていただけるでしょうか?角が取れているのに、必要な動きの良さはバッチリ備わっている感じです。

乗り込んでみると、本当に素晴らしい板だと感じます。安定感がある、というのは本当は間違った表現で、バランスが良い、と言う方が適当かも知れません。上級者の中には、「安定感がある」と聞いただけで動きが機敏でないのでは?と敬遠する人もいかも知れませんが、この板に関しては、不思議なことに、そんな心配は無用!と断言できます。安定しているのに、良く動くのです。

動きが良く、どこからでも技にもっていけるような板は他にもありますが、パーコモデルは、そういった板にありがちなデリケートなタッチであるとか、シビアなコントロールが要求される板ではありません。むしろ、波のどんなポジションにいても、どんな体重移動をしても、いつも板が足元にいてくれて、まるでライダーをサポートしてくれているかのような扱いやすさがあります。同じように動かしやすい板でも、非常にシビアに反応することで瞬時に動いていくような板もありますが、パーコモデルの場合、その優れたバランス性のために、どこからでも狙った動きに持って行けるような板です。乗ってみて、技のメイク率と同時に、板から落っこちない率が高いことには驚かされます。スッと技に入れて、サッと決まる感じがします。ホントかいな?と思う人は、ぜひ乗ってみることをお勧めします。パーコモデルは、技の難しさをちょっとだけ取り除いてくれるフレンドリーな板なのです。

ヘンな例えかも知れないんですが、僕はパーコモデルに乗るとき、板をぶん回すような感覚はなくて、従順でフレンドリーなワンちゃんと仲良くお散歩しているような気分なのです。板をコントロールするのは難しくなくて、乗っていてホントに楽しいです。まるで、板がライダーに対して協調性を持っているかのような感覚さえ抱かせてくれます。

全体に動きのテイストもマイルドで、プロモデルとは言え、いわゆるキンキンにチューンされたシビアなシェープでは全くないです。誤解しないでいただきたいんですが、決して鈍い板ではないです。なんと言ったら良いんでしょう?入力に対する反応が、カツーンという硬い感じで動くんではなくて、スムーズにシュルッっと動いて行く感じでしょうか?動き出した後も、足元から離れて勝手にどこかへ行ってしまう感じではなく、動きながらもバランスをキープしていてくれる感じなのです。この扱いやすさは、非常に絶妙なものがあります。クリティカルなポジションであっても重宝することは間違いありません。ケリースレーターにアルメリックのKボード、タジバロウにウェバーのタジモデルがあるように、優れたサーファーの陰には、いつも優れた板があるように思いますが、このパーコモデルも多分に漏れず、ご主人様をしっかりとサポートしているんじゃなかろうか?と思います。

動きが滑らかなので、一瞬スピードがそれほど高くないように感じられますが、実際には非常に良くドライブがかかり、しっかり加速します。体感速度は速くないのに、なぜかアップスでグイグイ抜けて行ってしまいます。スネ〜ヒザの超小波でも使いましたが、このことは波の大小にかかわらず一定で、アレレ?なんか抜けてく、という不思議な驚きがありました。あまり速くは感じないんですが、実際速いんだと思います。技のメイク率、コケない率だけでなく、抜けれる率も高いです。

それから、一つの動きから次の動きへのつなぎも非常にスムーズで、ギスギス感がありません。板の中には、クィックに回るのに、ターンの終了時には一瞬微妙に失速し、その後は前荷重と波の力、板の持つ加速性でなんとかスピードを回復する、という風に動きが途切れ途切れに感じられるものもありますが、パーコモデルの場合は、ターンの入口から出口までを流れるような無駄のない動きで抜けてくれます。よっぽどヘンな動きをしなければ、ターンによって失速することもなく、逆にドライブがかかって良い具合に次のセクションに入って行けると思います。

ここまで読んでいただいて、ある程度想像がついていると思うんですが、この板は決して上級者オンリーの板じゃありません。ディメンションさえ間違わなければ初心者からでも行けちゃうと思いますし、ひょっとしたらスタンダードよりも乗りやすいかも知れません。ただ、どことなくマイルド感がある板なので、シャープさや繊細さを求めるなら、スタンダードやミックモデルがお勧めですが、スムーズさの点では本当に素晴らしい板です。スタンダードやミックモデルも、決して特に難しかったりバランスが悪かったりするわけじゃなくて、どれもとても良い板だし、乗り手の好みによって善し悪しの基準も違ってくると思うんですが、パーコモデルはこれらの2本と比較すると、最も乗り手にやさしく、最も波のサイズへの対応幅も広いように思います。それでいて上級者には動き的に不満が出るかと言えば、全くそんなことはなくて、バランスが優れているために、板に身をゆだねて思い切って技をかけられるような板です。ちょっと良く聞こえ過ぎるかも知れませんが、自分の感じたままを書きたいと思います。

独断でミックモデルとパーコモデルを比較するなら、ミックモデルの方が、より軽いタッチで動く、より素早く動く、または、よりルースに動く、ということは言えるかも知れません。ただ、このことは念を押しておきたいんですが、パーコモデルも決して動きが悪いわけじゃなくて、とても良く動くんですが、ターンのフィーリングは、ミックモデルほどは軽くないです。逆に言えば、乗り手のレベルにもよりますが、しっかりと体重を乗せて、技を大きく見せたいサーファーに適しているように思います。パドル、テイクオフ、小波への対応に関しては、パーコは非常に優れています。ただ、根本的に性格が違うので、どちらが良い、というのは難しいです。安定した状態からスムーズに技を繰り出したいならパーコがお勧めですし、きわどいバランス感覚を好み、板にシャープなキレを求める方なら、断然ミックだと思います。ミックモデルのインプレにも書きましたが、ミックはミックでスナップのクイックさなど、かなり素晴らしいものがあります。対するパーコは、大きな半径で回す場合でも、小さな半径で回す場合でも、スタイルの根底にはカービングがあるような印象が強いです。カービングの性能に関して言えば、DHDはどのモデルも素晴らしいんですが、パーコモデルは中でも最も滑らかでスムーズなカービングをしてくれるモデルだと思います。

普段サーフィンする波が平均して腰以上である場合は、さほど意識する必要はないかも知れませんが、ここ湘南のように、大半がパワーのない風波であったり、スネ〜ヒザの超小波でも乗らなければならないエリアでサーフィンする場合は、パーコのドライブ性は非常に頼り甲斐があります。もちろん、パーコの持つドライブ性は、小波においてのみ発揮されるものではないので、あらゆる場面で強力な武器になることに違いはありません。

パーコモデルやパーコ自身のライディングについて、パワー系というのを聞いたことがありますが、僕的には、ホントにそうなんだろうか?と思います。パワーという部分で言ったら、アンディやサニー・ガルシア、オッキーなんかの方がはるかにパワー系と呼ぶに相応しい気がします。僕自身はDVDなどでパーコのライディングを見ても非常にリラックスしていてスムーズな気がするんですが、実際にこの板に乗ってみても、特に強烈なパンチ力を板自体が持っていたり、そんなパンチ力をライダーに求めたりするような印象は持ちませんでした。板には素晴らしいドライブ性があって、ターンの伸びもとても良いですが、それはドカーンといった感じではなく、スムーズでコントローラブルな伸びです。

こちらにパーコのライディングを撮影したショートクリップがあります。

スムーズさと扱いやすさの点では、僕がこれまでに乗った板の中でも、相当に素晴らしい部類に入ります。サーフィン界の微笑みの貴公子?ジョエル・パーキンソンの二度の総合2位を支えたのが、実はこのスムーズ番長、パーコ号であったことも、納得が行きます。

これから夏に突入し、波の取り合いはいっそう激しさを増すと思われますが、みなさんもパーコ号に乗って、やさしいスマイルでライディングされてみてはいかがでしょうか?

(2005/5/23)

 

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