File 9. Al Merrick M4

M4はアルメリックの板の中でも、センセーショナルなデビューを飾った板の一つだと思います。2003年のX-gamesでデイン・レイノルズがこのボードを使用して優勝しましたが、M4ってどうよ?と思っている方は少なくないんじゃないでしょうか?
デイン・レイノルズと言えば、今や若手の注目株の筆頭ですが、とあるアメリカの雑誌に、デイン・レイノルズがアンディ・アイアンズ、CJホブグッドらが共にトリップに行った記事がありました。その中のインタビューでアンディがデインのことを、「best
free surfer(最高のフリーサーファー)」と評していました。デインのライディングは、とにかく飛ぶ、回る、フレキシブルでルース。一本のライディングで複数のエアや360を入れてくることも少なくなく、ここで一回転して、えっ?まだ乗り継ぐ?と言った具合で、まさに技のビックリ玉手箱のようなサーファーです。アンディをして最高のフリーサーファーと言わしめたデイン・レイノルズってどんなサーファー?という方は、こちらにビデオがありますからチェックしてみてください。このビデオはやや古く、少年っぽい感じですが、最近撮影されたこちらのビデオではすっかり大人びてきました。板にはしっかりと「m4」とありますね。
アルメリックのHPには、「フラットなエントリーロッカーと、強いテールキック、フルレール、かつシングルコンケーブ」とあります。説明通り非常にロッカーが弱く、ノーズだけでなく全体にロッカーの反りは緩やかです。テール部分も、返しが強いのはキック部分のわずかなエリアだけです。レールは説明通りふっくらしたボリュームがあります。今回入手した板のテール形状は、デイン・レイノルズも愛用するラウンドテールです。同じラウンドテールでも、微妙に細かったり、丸かったりと、各シェーパーや板でそれぞれ違うものですが、M4のそれは、とても丸い、やや広めの感じです。
実際にパドルアウトすると、パドル時のスタビリティーが若干ですが弱いことに気付きます。もちろんパドルが困難なほどでは全くないので、気にするようなレベルではないと思います。こういったパドルのスタビリティーが弱い板は、ルース性が強く反応が敏感な板か、かまぼこ状に盛り上がったデッキの曲線が強すぎて左右に振られるものか(レールの差し込み具合は素晴らしいものが多いです)、または、本当に安定性に欠けているものなど、いくつかの種類がありますが、この板はおそらく最初の、板のルース性に関係するものではなかろうか?と思います。パドルもままならない初心者でなければ、特に問題はないでしょう。むしろ、スタビリティーが強く、立ってから動かない板の方がはるかに問題です。
ノーズロッカーの弱さは、これまでに「この板どうよ?」で扱った中では、ラスティーCJモデルに匹敵するものがあったので、非常に早い波のピックアップと滑り出しを期待したのですが、テイクオフ自体は、ノーズを抑えてある部類の板の中では、特に早い部類には入らないように感じられます。

一般にノーズロッカーが弱ければテイクオフが早い、というのが通説ですが、こうして色々な板に乗ってみると、ロッカーがしっかり付いていても早い板は早いし、逆にロッカーが弱い板はどんな板もテイクオフが早いかと言えば、必ずしもそうではないことが分かります。誤解のないように説明させていただきますが、M4は決してテイクオフの遅い板ではないです。ですが、ノーズロッカーが同程度の抑え具合を持った板と比較すると、決して速い方には入らないというのが僕の感想です。
M4と言えば、どちらかというと小波で活躍する板のイメージがあったのですが、小波ボードとしてより、腰〜頭くらいで使った方が断然面白いと、僕は思いました。スネ〜ヒザでも乗れないことはないですが、板のポテンシャルが十分に発揮されるのは、どちらかと言えば、腰以上くらいの気がします。小波での波のピックアップや爆走性を求めるなら、MBMの方が勝っているように思います。
さてさて、走り出しのフィーリングについてもう少し説明したいと思います。この板はテイクオフ自体が特別早かったりラクチンだったりはしないのに、いったんノーズを落とし込むことに成功すると、そこからはスッと走りが軽くなる感覚があります。その後は、ライディングの全般を通して非常にフロート感が強く、アメンボのようにスイスイと走ります。想像でしかないんですが、板のボトムコンツァーが波から一定以上の力を得ると、板が水面からリフトアップされるようにデザインされていて、それによって一気にスピード性とルース性を高められるんだと思います。ですから、いったん滑り出せば、とても速いし、とても軽く動きます。
この独特の浮遊感は、極端な言い方をすれば、まるで水面を浮いように走る感覚に近い気がします。M4のルース性は波のサイズにかかわらず強く、ヒザ波でも体感できますが、腰以上くらいになると、スピード性も素晴らしく、スムーズで、とっても良く回ります。頭くらいでも乗ってみましたが、スピード性とルース性が十分に発揮されて、とても楽しめました。サイズが上がっても特にローロッカーによって刺さってしまうこともなく、十分にオールラウンドに行ける板だと思いますし、僕個人としてはむしろ小波で乗るよりもある程度のサイズで乗った方が面白かったです。
回転性について少し感じたことを書きたいと思います。MBMのときも似たようなことを感じたんですが、前足側のレールを深く差し込む場合は、もうターンのことは忘れて、ドライブをかけて板からの伸びを引き出すことに集中した方がベターかな?という気がしました。ひょっとしたら、ロッカーが弱めの板に共通の傾向なのかも知れませんが、前足側のレールによる旋回性はあまり高くなく、前への荷重は、旋回よりも伸びの方にパワーを持って行かれる割合が強いと思います。前足重視のサーファーには、ちょっと合わないというか、扱いにくくさえ感じられる可能性もあります。そのかわり、逆に、ターン時にテールへの荷重配分を意識的に増してやると、生まれ変わったように、素晴らしくクイックに、かつスピーディーに回ります。荷重の方法が分かってターンが決まり出すと、まるで、与えられたエネルギーを全て回転方向に変換して、どこまでも回って行ってしまうような強い回転性を発揮するようになります。

M4という板は、ある意味、本当に特徴的な板だと思います。レールにボリュームがあることもあって、強めのターンに入ってもレールががっちりと波に噛むという感じは薄く、鋭くエッジを立てて波をえぐるような感じには持って行きにくい気がします。強めの入力をしても、全てのパワーが回転方向に直結して、一気に滑るように回転するようなイメージ、と言ったら何となく分かっていただけるでしょうか?上に説明したような浮遊感を伴って、非常にルースな回転性を見せてくれます。今回、比較的ボリューム感のあるアルメリックのシェープということで、浮力を考慮して若干薄めの板に乗りましたが、それでもこういった浮揚感のような感覚を持ちました。レールのボリュームは意図的なもので、それによって水面を滑るようにし、ルース性を増す狙いがあるんだと思います。このへんのテールを使った素早いスナップやテールスライドは、乗り慣れてくると、とても面白くなってくると思います。こういった性格を持った板なので、どちらかと言えば、強いドライブターンをしたい人よりも、スケート的なフリーサーフィンを好む人にお勧めしたい板です。
ちょっと補足させていただきたいんですが、上で紹介したビデオを見ても、デインは十分に波をえぐってます。この板では波をえぐれない、ということではないんですね。ただ、あくまでこれまでに僕が乗った他の板と比較した場合に、どちらかと言えば、同じような入力をした場合、えぐる方の動きよりも、水面をなめるように回るような動きの方が持って行きやすい板、と感じられたのです。
乗りこなす際のキーになるのは、やはり、MBM同様、前足によるドライブと後ろ足重視の回転のメリハリを付けられるか、というところにあるような気がします。そして、さらに、ボリュームのあるレールからうまくドライブを引き出してあげられれば、M4がそもそも持っているスピード性にさらにプラスアルファのパワーを加えることができると思います。
あと、ターンに持って行くタイミングやセクションによっては、トップでスコッとテールが抜けることがありました。デインのライディングを見ると、むしろこの抜けの良さを最大に生かして乗っているように見受けられます。抜けた後もバランスが崩れるでもなく、そのまま次のセクションに入っていけるような板ですから、逆に、ひっかかりがなく、どこまでも回っていくようなこの板の性格をフルに生かして乗るのが、M4流の乗り方なのでしょう。

それから、最初の方でパドル時のスタビリティーについて書きましたが、実際に立ってからは、スタビリティーはちゃんとしています。ロッカーが弱いせいでしょうか?ボード上の立ち位置を前に移動するなどしてパワーのないセクションを乗り継ぐ場合でも、立ち位置の移動はとてもイージーに感じられました。
やはり、この板を検討されている方には、まずデイン・レイノルズのライディングをチェックしていただいた方が良いと思います。M4に乗れば誰でもあんなサーフィンができる、ということではないんですが、テールのスライド性や板の回転性の特徴は、なんとなくデインのライディングが物語っています。いつも思うんですが、板を選ぶ際には、好きなライダーの乗っている板を選ぶのが、とても有効である気がします。こうして色々な板に乗ってみると、サーファーのスタイルがある程度板のスタイルとシンクロしていることが分かってきます。サーフボードは常にサーファーをサポートしていて、ルースなテールスライドを得意とするサーファーは、テール側のレールがガチッと噛む板でルースな技をかけているわけではなく、ルースな板でルースな技をかけているんだと感じます。だから、もし好きなサーファーがいて、そういったスタイルを目指してるんだったら、そのサーファーの乗っている板に乗ってみるのも手だと思います。
まるでデイン・レイノルズのシグネチャーモデルのようなこのM4ですが、板のテイストは極めて特徴的で、この板ならではの、独特の浮遊感、ルース性、スライド性があります。まさにこんなフィーリングを求めていた!という人と、そうでない人とで、大きく意見が分かれそうなボードです。ルース性を生かしてスナップに持って行き、ルース性を生かしてリカバリ、といった具合に、この板の動きをどこまで自分の見方につけられるかが重要になってきそうです。ご自分の目指すスタイルと照らし合わせて検討されると良いと思います。
ところで最近、とあるサーフボードのブランクスを削るマシンの操作を担当する人(アルのマシンではありません)と直接話をすることができました。その人曰わく、なんと最新鋭のマシンでは9割以上をマシンで仕上げてしまうらしいのです。レールについては、100%マシンで仕上げることができるそうです(マシンによります)。当人曰わく、「Monkey
can touch it.(サルでもタッチアップできるよ)」とのことですから、シェーピングマシーンのクォリティーは、相当にすごいレベルに到達しつつあるんだと思います。もちろん、このセリフはブランクスのシェーピングを担当する人からの言葉なので、本当にずぶの素人がタッチアップできるかどうかは疑問ですが、いずれにしても、要の部分を含めて、相当なところまでマシンが仕上げてしまうのは事実のようです。よく本人シェープがどうとかシャドーがどうとか、という話を聞きますが、もうここまで来ればシャドーで十分じゃないか!と、僕は本気でそう思います。
アルメリックと言えば、いち早くマシンを導入し、そのメリットを生かして世界中に板を供給し続けているサーフボード界の大御所です。その筋に詳しい方から聞いた話ですが、現在、日本の契約プロがオーダーしても本人シェープは2年待ち、素人からのオーダーは一切受け付けていないと聞きます。ですが、我々一般サーファーが、プロが乗る板の正確なリプロダクションのような板に乗れるのも、ある意味マシンのおかげですし、逆にこういった利点を、先入観を持たずに楽しんじゃったら良いんじゃないだろうか?と僕なんかは思うわけなんです。だいいち、ツアーをフォローするプロサーファーなら別として、一般サーファーなら、板の精度よりも自分の技の精度を気にした方が、よっぽど上達すると思うし、サーフィンを楽しめるんじゃなかろうか?と思っちゃうわけです。ですから、よくネット上で見かけるハンドシェープ最強論みたいなものは、本当に良く分かりません。マシンより正確に削れるシェーパーがどのくらいいるんでしょうか?革製品や陶芸品なら、手作りの風合いに価値がありますが、サーフボードのそれには価値はないと思います。もしアルの本人シェープをゲットできたら、人には自慢できるかも知れませんが、それによって自分のライディングが生まれ変わったようにイケイケになるとは思えません。冷静に考えて、マシンで十分ではないかと。そんな風に思っちゃうわけですね。それに、本人シェープなんかゲットできたら、もったいなくて乗れません。(笑
またまた余談ばかりになってしまいましたが、デイン・レイノルズの独創的なライディングを支えるアルメリックM4のインプレでした。
(2005/6/7)
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