File 11. JS Flyboy

前回のコンバットに引き続き、連発でJS、行っちゃいます!今回はJS Flyboyです。僕自身も好きな板の一つで、これまでに異なるディメンションで3本乗ってます。先日、掲示板で自分の中のベスト3を聞かれた時に、JSスタンダードを挙げましたが、実は、どちらを入れようかな?と少し迷ったのが、このフライボーイだったのです。この板は、小柄な割にはパワーがあり、深いトラックで綺麗なラインのサーフィンをするディーン・モリソンが乗るモデルです。ASPのデータによれば、身長は約168cm、体重は65kgと、日本人の平均的な体格に近いサーファーではないかな?という感じがします。

板の外観で、まず目に付くのは、スッキリと落とされたレールのボリューム感、それに、全体にまんべんなく付いたロッカーです。見た目で板を判断するのは、いかがなものか?というのもありますが、第一印象は時として有効だったりします。パッと見て、おっ!こいつはちょっと乗ってみたい板だぞ!と思わせる雰囲気があります。もちろん、選ぶ人の好みもあるんですが、いかにも反応の良さそうなデザインです。

ロッカーはノーズが強いのか、テールが強いのか、はっきり言って良く分かりません。見る角度によってはノーズ側が強く見えますし、別の角度から見るとテール側が強く見えます。JSの公式サイトによれば、「よりフラットなエントリーロッカー」とありますが、ホントかいな?という感じで、いったいどこを基準に見れば良いんだろう?という気がします。ですが、そのように書かれているということは、基本はテールを反らせたコンセプトで作られているんだろうと思います。おそらく、テールロッカーの反り始めの位置が前寄りなので、短い区間でフリップが付いているノーズの反りが強く見えるんだろうと思います。いずれにしても、普通一般に言う「フラットエントリーロッカー」という部類には、全然入らないんじゃないだろうか?という風に感じられます。

コンケーブはノーズから薄いシングルが、センター付近からダブルが入り、サイドフィン付近で最もダブルのおうとつが深くなっています。

テイクオフの感じは、他のJS同様、特別早いような印象はありませんが、ライダーの腕次第では、なかなか良好なテイクオフができます。

僕がこの手のロッカーのある板でテイクオフするときには、ちょっとしたコツを使います。まず、ロッカーがある、ということは、それだけノーズを落としても刺さらない、ということでもあるので、テイクオフの時は、刺さらないギリギリのところまでノーズを落とします。もちろん、この、落とし込みのタイミングは、「やっちゃってみる?」にあるように、ボードが波に持ち上げられてからではなく、波に反応する前の、水面がたいらな部分で開始します。それから、パドルスピードを早い段階でトップスピードに乗せることも大切です。で、そんな風にしながら強めに伏せると、フラットなロッカーの板と違い、ロッカーの反った部分が自ずと水中に深めに埋まります。そうすると、この水中に埋まった板の湾曲したボトム面がうまく波のパワーをキャッチしてくれるので、案外スッと滑り出してくれるのです。この方法をマスターすると、テイクオフがより簡単になり、ロッカーが強い板に対する抵抗もなくなります。そればかりか、その人の技量にもよりますが、ヘタをすれば、板を選ぶ際に、テイクオフの早い板、という条件を外しても良いくらいになっちゃったりします。だったらどうなの?と思わないでくださいね。このこだわりがなければ、フルレールで大きなカービングを描ける板や、ポケットでのフィット感が素晴らしい板など、板を選ぶ際の選択肢をかなり広げることができるのです。なので、これはなかなか面白い変化です。

こんな方法でテイクオフする人にとっては、フライボーイのロッカーは、思い切ってノーズを落とし込める、まさに絶妙な反り具合ではないかな?という気がします。まだトライされたことのない方は、ぜひ、チャレンジしてみてください。

フライボーイは、JSスタンダードに比べると、取り回しは軽いように思います。と言っても、ここで注意して欲しいんですが、ここで言う軽さというのは、シャカシャカ、スルスルと力が逃げちゃうような軽さではありません。この板には、ボトム側のレールのエッジ感と比較的すっきりしたシャープなレールによって、良好な波への食い付き感があります。ですから、基本的にはJSスタンダードに似た、ソリッドなフィーリングを持ち合わせています。ですが、スタンダードよりも、レールの抜き刺しのタッチは軽く、かつ、強めのロッカーとスッキリと落とされたボリュームによって、全般的な取り回しはクィックなテイストになっている、という感じがあります。ひょっとしたら、スピード性とパンチ力の面では、スタンダードに分があるかも知れませんが、フライボーイにはシャープなエグリ感と、優れた操作性があります。スピード自体についても、十分な程度ではあると思うのですが、JS特有のグイグイ感は、スタンダードの方が強い気がします。

回転性については、DHDなどと比べると高くはない、と思われる方がいるかもしれません。しかし!ここで早合点しないで、ぜひ、入力の仕方を工夫しながら乗り込んでみてください。ターンの性格はちょっと違いますが、特にこのフライボーイは、乗り方次第で非常にクィックに動きます。DHDの方が、ターン時のスムーズ感というか、滑らか感のようなものは強く、同じ入力なら、回転の度合いは高いと思います。JSのターンは、どちらかと言うとピシッと引き締まった、エッジの効いたテイストになります。

このフライボーイの特徴の一つとして、センターからテールにかけてのロッカーの反り具合が、非常にナチュラルである、ということがあります。つまり、突然反りが強くなったり弱くなったりする部分がなく、一定の反り具合の、クリーンなラインで構成されています。

色々な板を見ていると、アウトラインやロッカーの角度が、ある部分を起点に急激に変化している板を、よく見かけます。こういったラインには、それによってピボットのような動きを作り出す効果があって、特定の重心で乗った場合に、回転性が格段に向上します。ところが、逆に特定の重心以外の重心で乗った場合には、反応がやや鈍感になったりすることがあるのです。もちろん、扱い慣れれば何て事はないんですが、強烈な回転性を求める人と、ナチュラルな旋回性を求める人とで、好みが分かれそうな部分ではないかと思います。

この点について、フライボーイは、アウトラインやボトムコンツァーに取って付けたような不自然な部分がないのです。これは、サーフボードに対してナチュラルなフィーリングを求める人にとっては、とても素晴らしいことだと思います。分かりやすくするために、極端な表現で説明しますと、フライボーイの場合、ドライブで前に伸ばすときは前重視、タイトなスナップは後重視、という単純な2つの荷重ポイントの間に、その2つの動きをほど良くミックスできる無数の荷重ポイントがあり、どこにパワーをかけるかによって、ドライブ、カービング、スナップ、またはそれらのミックスのような動きを、ライダー自身が自在に設定できるのです。もちろん、ピボット的な動きをする板も、ターンの仕方は乗り手次第なんですが、性格はより極端になってしまいます。とにかくタイトなアークで、どこからでも縦に行きたい、ということなら、ピボット的なテイストを持つ板のパワーは絶大です。ですが、ナチュラルなカーブで構成された板にも、味があり、それなりの楽しさがあります。

それでもなおかつ、ピボットを持つ板のようにエグいスナップがしたいんだ!という方、心配はご無用です!先ほどナチュラルなボトムコンツァーについて説明しましたが、実は、フライボーイも、テール先端から約5cmくらいの部分に、かすかに反りの強いキックが付いているのです。ですから、お望みであれば、適宜、これでもかっ!というくらいのウェイトをテールに乗せてガコーンと回してみてください。まさに、ブン回す、と表現しても良いくらいの過激なスナップで波を刻むことができます。この時にも、JS独特のエッジ感が効果を発揮し、テールを逃がさずに、鋭い切れ味が体感できます。

スピード性についてですが、やはりJSです。踏み込んだ時の加速感は素晴らしいです!乗り手が板を動かせば、シュッ、シュッ、と軽快に動きながらビュンビュンスピードに乗ります。フライボーイは、レールを抜き刺しして加速する時の板の動きが特徴的です。サーフボードの中には、ポンピングしても水面にへばりつく感じで滑っていくようなものがありますが、フライボーイの場合は、踏み込んだ後の板の弾み感が大きく、ポン、ポン、と板が極めて軽やかに動きます。ですから、動かし方によっては、非常に軽い取り回しで乗ることができ、セクションを探しながら軽いポンピングで乗り継いで、いざ僅かなセクションで瞬間的に当て込まなければならないような場合でも、ポンピングの延長上でスパッと一気に板を振り上げるような動きができます。また、クローズ気味のセクションで素早くフローターに入るような動きも得意な板です。

この動きについて説明するのは、ちょっと難しいんですが、極端に言うと、ポンピングによって、ワンプッシュ、ワンプッシュごとに、「弾む」という表現がうまく当てはまるかも知れません。これは別に弾ませよう、と思わなくてもそうなる傾向が強くて、非常にキビキビした元気の良い動きを見せてくれます。と言っても、むやみとポンポン跳ねちゃうということでもなくて、先ほどのロッカーの説明にも関係しますが、ディーン・モリソンのライディングに見られるように、フルレールでグォッとえぐってでっかいカービング、なんて動きも問題ありません。ボトムコンツァーとアウトラインがクリーンなために、おそらく、JSの中では、最もフルレールカービングに適したモデルじゃなかろうか?とさえ感じます。ですから、フットワークの軽いタイトな動きにも、大きなラインのスタイルにも、どちらにも広く対応する、と言う意味で、とても完成度の高い板であると感じられます。

ところで、とあるフライボーイ乗りの人と話をしているときに、「フライボーイをラウンドテールで乗ったら、どうなるんだろう?ひょっとしたら、アクが抜けて面白いテイストになるんじゃないだろうか?」というコメントをいただいたことがありました。確かに、JSの板には、独特のエッジのパキッと感が強く出ていて、必ずしも万人にとって乗りやすい板であるかと言えば、微妙なところがあります。中には、このパキッと感を扱いにくく感じられる人もいるかも知れません。これにラウンドテールのスムーズさが加わったら、バランスが取れて非常に乗りやすく、かつコントローラブルになるかも知れない、ということを、実は僕も以前から考えていたのです。

その後、ラウンドテールのフライボーイをゲットできるチャンスがあり、すかさず乗ってみました!これは本当に好印象でした。フライボーイ自体、そうとう面白い板ですが、よりフレキシブルに動くようになり、トップでのスナップは滑らかに、かつ素早くなる感じがします。そもそもラウンドテールは、テールブロックの一方に引っかけて回すタイプとは異なり、動きの自由度が高いデザインなので、板が、より生き生きした感じになりますし、パキッと感も和らいで、非常に滑らかなフィーリングになります。ですから、JS独特のパンチ力を求める人はラウンドスクェア、どちらかというとフリーサーフィン系の動きでイージーに、より自由に乗りたい人にはラウンドテール、という選択も面白いと思います。

それから、厚みの選択についても、少し書きたいと思います。カリフォルニアシェープの板と同じ感覚でフライボーイをゲットしたら、浮力不足でまいった、という話を聞いたことがあります。実際、フライボーイはJSの中でも最もボリュームが落とされたシェープになっているので、厚みの選択には注意が必要です。平均的なUSシェープの板に慣れている方がフライボーイを検討される場合、パドル力に自信がある方以外は、厚みはワンサイズ上げた方が無難かも知れません。それから、波のパワーがあまり強くないエリアで使うことが多い場合も、若干厚めに取ることをお勧めします。

あまりに薄い板で長時間サーフィンするのは、非常にキツイものがあります。浮力にゆとりのある板でパドルすると、徐々に慣性が増し、ある程度楽に板が滑ってくれますが、浮力にゆとりがない板でパドルすると、慣性が増さず、ワンストローク、ワンストロークが、いちいち重いのです。特に週末のみサーフィンを楽しまれる方なら、なおのこと、こういった負担はない方がベターだと思います。

薄い板に乗ると、板の動きが良くなるようなイメージがあるかも知れませんが、それにしても、リッピングを出来ない人が薄い板に乗ることでリッピングできるようになるかと言えば、全くそんなことはなく、そういったことは、基本的には乗り手の腕による気がします。だったら、ある程度ゆとりのある浮力を確保して、たくさんの波に乗り、シビアなコントロールよりも、技自体の動作に集中できる方が得策ではないでしょうか?

また、パンパンに張ったボキシーレールの板なら、ワンサイズ上げるだけでも、かなり勇気が要ることがありますが、フライボーイのようにレールがスッキリした板だったら、センターを上げてもレールのフィーリングには大きな影響がなかったりします。

さてさて、話を元に戻しますが、このフライボーイは僕の知る方々の間では非常に好評なようです。特に癖のようなものもなく、シャキッとした歯切れの良さと良好な動作性を備えた秀作であるように思います。また、先ほどロッカーの部分で説明したように、色々な荷重ポイントで様々なターンを試みるのも楽しく、乗り手がはっきりと当事者感覚を持てる板であるように思います。

JSの公式サイトには、「ライト/ミディアムウェイトのサーファーを対象に作られている」とありますが、これはほとんど気にされる必要はないでしょう。要するにヘビーウェイトでなければオッケーなのです。欧米人で言うヘビーウェイトっていうのは、ホントにデカマルな人なので、日本人で多少体格が良くても、あらかたミドルレンジに入っていると思って、間違いないと思います。

基本的にフライボーイは、JSのラインナップの中では、スタンダードと近い性格があります。どちらもいかにもJSらしいテイストを持っていますが、スピード性とパンチ力を優先するならスタンダード、より鋭い俊敏性を求める人にはフライボーイではないかと、そんな風に思います。

(2005/6/24)

 

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