File 13. JS CV8

 

CV8は僕の中で、最もJSらしくない板のように思えます。えらく回転性が高く、それほど思い切った入力をしなくてもクィックに回ります。いかにもJSらしいパンチ力を求める人には、最初は、若干物足りなく感じられるかも知れません。この板のテールには、パッと見て分かるほどの大変強いキックがあり、これによってとても小さな半径でクルンと回るようになっています。最初にこのキックを見た時に、あまりに極端なので、これで回らないはずはないだろう、という推測が容易についたのですが、実際、大変に良く回る板でした。このテールによる回転性は、コンバットのそれよりも、もっと強い感じです。これまでにインプレをご紹介したJSの中では、最も乗り味がソフトでイージーな回転性を持ったモデルのように感じられます。

普段キックが強くない板に乗っている人が、突然キックの強い板に乗り替えると、テールがスルスルと動いてしまい、ターン時のエグリ感が足りなく感じられることがあると思います。ですが、ほとんどの場合、乗り慣れてくると、しっかりとテールを軸にしてジャコっとえぐれるようになると思います。これは、キックの角度が増したことで、これまで同様の入力では、テール部分に十分なプレスをかけられなかったのが、乗り慣れることで、キックの反りが強い部分を有効に使えるようになるためだと思われます。ですから、乗り始めこそ、ターン時に板のパンチ力がちょっと弱いかな〜?という感覚を持つかも知れませんが、気長に回数を重ねると良いと思います。キックの反り具合をフルに使えるようになってくると、かなり小さな半径のターンを繰り出しながら、しっかりスプレーを飛ばすような感じで乗れるようになると思います。

いつも思うことですが、1回や2回のライディングで「調子悪いな〜」というフィーリングを持ったとしても、板のパフォーマンスを決めつけるのは、時期尚早かも知れません。乗り重ねることで、板のポテンシャルを引き出すような乗り方が分かってくることは、多々あるように思います。

中〜上級者の方が、「スルスルと動きすぎる」という印象を持った場合は、大きめのフィンを付けてみると良いフィーリングを得られるかも知れません。GAM、GRなどの大きめのフィンも試しましたが、こういった回転性の高い板と、大きめのフィンとのマッチングは本当に良い感じです。より多くの水をとらえるようにデザインされたフィンを、板の強い回転性によって動かすことができるので、結果として強いプッシュと適度な回転性の両方が得られます。

このキックに加えて、フロント側のボリュームが大きいこともまた、JSらしからぬ印象を与える部分の一つです。今回、普段より微妙に薄めのディメンションで乗りましたが、全体に十分以上の浮力があり、かつ、板の前側にしっかりとした浮力感が感じられました。そのため、パドルやテイクオフが微妙に楽な感じでした。薄めのディメンションで乗ってこのボリューム感ですから、普段の厚みで乗っていたら、かなりゆとりのあるフィーリングで乗れる板になるんだろうと推測されます。ひょっとしたら、それがこの板のテイストなのかも知れません。前にMBMの説明で、forgiving(フォーギビング:許容度が高い)という言葉をご紹介しましたが、この板は非常にフォーギビングな性格の板で、JSの中では初心者から上級者まで、最も広い層のサーファーが楽しめるモデルのような気がします。また、JSの公式サイトに「Tested in 1ft-15ft with huge success(1〜15フィートの波でテストし、大変素晴らしい感触を得た)」とあるように、対応する波のレンジも非常に広いようです。僕がテストできたのは、ヒザ〜胸・肩くらいのレンジですが、特に問題なく対応できていました。

爆発的な人気を博すJSですが、どちらかと言えば乗り味的には硬派な部類に入る板が多いように思えます。そんな中にあって、CV8は、最もユーザーフレンドリーなモデルかも知れません。

さて、板の外観です。デッキ側からアウトラインを眺めると、面積的にはテール側にボリュームが寄っているように見受けられますが、乗った感じでは、フロント側の浮力感が強く感じられます。これはおそらく、厚みの配分(サイドから見た時のボリューム感)がノーズ寄りになっているためだと思われます。ノーズ側にボリュームを持たせてパドルやテイクオフをイージーにするデザインと言えば、アルメリックがよく知られていますが、このCV8も、どことなくそんなデザインを彷彿とさせます。

レールは、JSの中ではボリュームがしっかりした感じだと思います。板の全体的なボリューム感を比較すると、Flyboy、Standard、Combat、CV8といった順で厚くなる感じだと思います。

ノーズロッカーは特に強くもなく、弱くもなく、といった感じですが、JSの中では抑え気味の方かも知れません。

この板は、とにかくキックが強いので、小さな半径でタイトに回ることを得意としています。ですから、素早く変化する波の僅かなセクションでも狙いやすい、と言う意味では、チャンスに強い板かも知れません。ただ逆に、レールをフルに使って大きな半径のカービングを目指す人には、ちょっと性格が極端すぎるかも知れません。

いつも思うことですが、サーフボードに「万能」ということはあり得ないと思います。全ての性能を100%満たす乗物など、サーフボードに限らず、本当は存在しないのかも知れません。全てを満たそうとすれば、それこそ、不要なものを限りなくそぎ落としたフォーミュラーカーに、高級車のラグジュアリーな皮のリクライニングシートを取り付けるようなものです。きっと、まるでチグハグな乗物が出来てしまうに違いありません。ですから、たまにヤフオクなどで、夢のような説明と共に出品されている板がありますが、見ている方が恥ずかしくなります。そういった説明は嘘であるとは言い切れませんが、もし嘘でなかったら、出品者の感覚がズレているのかも知れません。人のすることをとやかく言うのは好きじゃないですし、自分にその資格があるのかも分かりませんが、でも、時々、そう思わざるを得ないことがあります。サーフィンは大変に難しいスポーツで、全てがイージーなんてことは絶対にありませんし、だからこそ没頭でき、達成感があり、そしてハンパじゃなく楽しいのです。「食べて痩せる」ダイエットの誇大広告を彷彿とさせるようなキャッチコピーには、僕はどうもうなずけません。マジックボードの定義は人によって異なるもので、出品者の言うマジックボードが、買われる方にとってのマジックボードとなり得るとは限らない、ということも考えられます。

はい。またまた脱線。ちょっと戻しましょう。いずれにしても、この板のコンセプトは、非常にはっきりしています。ボリュームの配分によってテイクオフや走行性を補完し、キックによって強い回転性を得る、という極めて分かりやすいデザインではないでしょうか。普通は、キックが極端に強いと、板を動かしたときにテールから押し出される水の量も減り、ドライブも弱くなる傾向がありますが、そういった部分は、しっかりと計算に入れられていて、走行性をフロント側のボリューム感で補完しようという狙いが感じられます。鶏が先か、卵が先かって話になっちゃいますが、あるいは、フロント側にボリュームを持たせたことで走行感をイージーにし、ノーズ側の取り回しを楽にするためにキックを強めたのかも知れません。とにかく、走行性と回転性のバランスを狙った板なんじゃないかな?と考えられます。

この板は、タイトに回ることは得意ですが、Flyboyのような取り回しの軽さとは、ちょっと違います。大変良く回ることに違いはないですし、回転はイージーなのですが、Flyboyのように全体が薄いデザインの板に比べると、十分にタイトに回りつつも板にはある程度の重さが感じられます。最近テストしたHICのAndy Ironsモデル(後ほどアップします)もそうなんですが、ボリュームはしっかりついているのに、非常にタイトに回ります。手に持った時の板の重量が軽いと、さも板自体が調子良いのでは?とか、逆に重いと、取り回しが重いのでは?と思ったりすることはないでしょうか?ですが、必ずしも板のボリューム感と回転性は比例するとは限らない気がします。このあたりについては、推測でしかないんですが、回転性については、ロッカーやアウトラインが果たす役割が大きく、ボリュームは走行性や取り回し、それから板のバランスなんかに影響するのではないかと思います。

さて、JSの中でも極めて性格のはっきりした回転マシーン、CV8、とにかく回したいんだ!という人にはお勧めできる板かも知れませんね。

(2005/8/10)

 

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