File 17. Simon
XFC Single/C-DC
Simon Andersonと言えば、トライフィンの発明者として有名ですが、ちょっと検索してみると、Wikipedia(英語版)に面白い記述がありました。実はサイモンアンダーソンの前に3つのフィンを付けたボードを作っていた人達があったらしいのです。しかしそれらはシングルフィンに2つの小さなサイドフィンを付けたようなタイプであって、3つのフィンを類似する大きさとしたのはサイモンのThruster(スラスター:「自ら推進するもの」「小型ロケットエンジン」などの意味があります)が初めてであったようです。このスラスターも、当初はただの小細工のように思われていたようですが、サイモン自らがベルズビーチクラッシックとコーク・サーフアバウトで優勝し、その後パイプラインマスターズで優勝したことで批判をねじ伏せて支持を獲得したというのです。第一人者というのは、いつの時代も壁にぶち当たるものなのでしょうか。サイモン自身が自らの板で成績をあげることがなければ、もしかしたらトライフィンはその後もしばらく日の目を見ることはなかったかも知れません。今にしれみれば、世界中のサーファーに最も大きな影響を与えた大発明の一つなのですが、現実には受け入れられるまでに相当な時間がかかったようです。
で、そのサイモンが近年再び大きな脚光を浴びつつあるのは、ほぼ疑いなく、前人未踏の7度の世界チャンピオンという偉業を達成したケリースレーターがWCTでサイモンの板に乗りはじめ、素晴らしいライディングを披露しているためではないでしょうか。最近のケリーのライディングを見ていると、極端な言い方をすれば、勝つのが当たり前、というか、負けることが何かの間違いではないかと思えるほど超越したサーフィンをしているように見えるのは、僕だけでしょうか。スタイル、パワー、安定感、ブチキレたアクション、どれを取っても、負ける要因を探す方が難しいようなライディングに見えます。WCTから遠ざかり、再び復帰した当初はサーフィンを楽しんでいないようにも見えましたし、実際にインタビューでも「足りないのは自信とモチベーション」と語っていたこともありました。ライバルと目されることも多い某スーパーサーファーが、某海外雑誌のインタビューで「もう僕らの間では、彼(ケリー)のことは話題にあがることはないんだ」と言わせたほど、一時期はラディカルなサーフィンの第一戦から一歩後退してしまったかのように見えました。が、昨年からのケリーはプレッシャーから解き放たれ、サーフィンのレベルをさらにワンランク押し上げてしまいそうなほどキレたライディングを見せています。去年のインタビューでは、良く覚えていないので正確ではないかも知れませんが、「プレッシャーを忘れてサーフィンを楽しむようにしたら自分のサーフィンができるようになった」といったことを語っていたように思います。足りなかったのは自信でもモチベーションでもなく、サーフィンを楽しむことであったのかも知れません。しかしあの大舞台で世界中の猛者を相手にプレッシャーを感じずにサーフィンを楽しむなんて、ちょっとフツーの人にはあり得ませんよね。自分を追い込みすぎてライディングがうまく行かなくなったら、ケリーのように楽しんで実力を発揮できたら素敵ですね。
自伝「Pipe Dreams」を読む限り、素晴らしい人間性もうかがえます。この自伝には、フロリダの小さなさざ波でサーフィンをしていた自分には、父や兄のように遙かかなたのヒザモモの波に乗ることが夢であって、それ以上のことはテレビで観たパイプラインマスターズのような夢物語であった。といった内容が記されていますが、その少年が6度の世界チャンピオンに輝くのですから(自伝の発行時は6度でした)、壮大なスケールの実話です。
話を戻しますが、XFCにはXFC SingleとXFC C-DCの2タイプがあり、SingleとC-DCの違いは、ディープシングルコンケーブか、ディープシングルダブルコンケーブか、とのことですが、乗り味は、アリャ?コンケーブだけでこんなに変わるの?と思えるほど違っていました。もちろんXFCの基本的なロッカーから来るテイストは同じですが、いくつかの部分で体感できるほどの違いを感じます。
ロッカーや板のボリューム感に対する感覚は人それぞれですが、XFCはノーズフリップこそあまり強くないものの、エントリーロッカー全体としては、やや強めであるように見えます。
Simonの説明によれば、「It has smooth nose entry, extra tail rocker (スムーズなノーズロッカーと強めのテールロッカーを持つ)」とあります。確かに板の前半分を基準として見れば強いテールロッカーであるように見えますし、後半を基準とすると逆にノーズロッカーが強いように見えないこともありません。このあたりは、ご覧になる方、乗られる方にご自分で判断していただくしかないと思いますが、このように見方によってどちらにも見える、ということは、少なくとも板をrock(揺さぶる)する機能であるロッカーは比較的しっかりついているタイプの板であると言えるのではないかと思います。
このロッカーに相応しく、回転性と基本的な動作性能は非常に高い部類に入る板であるように思います。フラットなロッカーを持つ板のように波面にベタっと張り付いたような動きとは無縁で、比較的小さな回転半径で素早く狙ったセクションに持って行くことが得意な板であると思います。
しかし、俗に言われる強いロッカー=遅いテイクオフのセオリーは、この板にはないようです。テイクオフは早く、波質によっては平凡な性能の板よりかはワンテンポ早く板に足をつけられるほど早いと思います。またスピードも速い板であると思います。ただロッカーが弱くないだけに多少の注意は必要です。テイクオフを早くするにはノーズを落とすことが非常に重要ですが、前に乗り過ぎるとテールからグルンと巻き上げられることもあり、極端に前方に乗ってパドルするよりは、前過ぎないそこそこ前くらいの位置でパドルし、胸を早めに伏せるなどして巻き上げられない程度にノーズを落とす必要があるように思います。
レールの感じはややふっくらめであるように見えます。JSやDHDよりかはややソフトめですが、アルのレールよりは明らかに薄め、といった感じでしょうか。正確な表現は難しいですが、両者の中間的なボリューム感になるのかも知れません。
テイクオフとスピードについては、共に、波のパワーが貧弱なところではC-DCの方が早く感じました。逆に一定のパワーを波から受けられる場合は、Singleの優位性が高くなってくるように思います。Singleも小波等において遅いわけでは決してなく、事実、C-DCに乗るまでは、テイクオフ、スピードともになかなか早い板だなぁ〜という実感を持っていました。しかしC-DCを小波で乗ってみると、C-DCは明らかにパワーのない波での走行性がSingleよりも高いように感じられました。
また回転性もずいぶん違っていました。Singleは非常に攻撃的な動作性能を持っているように思います。板が自発的に回ろうとするというか、動作の開始時における初動が早いです。また初動だけでなく、ターン後半の動きも、状況によっては「これでもか!」というほどグリグリ回ります。まさにあのケリーがやるような、グリグリターンをやってみたいなら、迷わずこのSingleを選択すべきと思います。角度のあるターンをメイクしやすい板ですが、特にトップターンでは意図する角度よりもさらに深く回り込み、トップターンからそのままカットバックに入っちゃうほどで、言い方が適切かどうか分かりませんが、異様に回ります。
しかし、ライディング全般を通してのバランスはC-DCよりも繊細で、コントロールにはより注意力を要するように思います。Singleにはとても強い回転の軸があるので、ライダーがそれについていけないと、難しく感じられるかも知れません。板の回転の軸がどこにあるのか研究し、それにフィットするようなスタイルでタイトに乗れないと、板に振り回されてしまう、といったこともあり得ると思います。
対するC-DCは、Singleよりも安定性が高く感じられます。ライディング全般において、Singleよりかは落ち着いたフィーリングで、とても扱いやすく感じます。Singleはレールの入りはじめもスパッと行き、それでいてターン終了時も、止まらずにどこまでも回り続けるような性格が強いですが、C-DCの初動はSingleよりかは穏やかでバランスを取りやすく、ターン後半も制御しやすい範囲のところで終了してくれる感じがあります。非常にコントローラブルで、ケリーのように、という希望がない人であれば、おそらくこちらの方が扱いやすい板であると思います。これはあくまでSingleとの比較であって、全体で見ればC-DCも十分に高い運動性能を持っていることに変わりありません。
どちらも比較的ソフトなレールを持っているため、タッチそのものが繊細であるわけではありませんが、Singleは常にインサイドに切れ込んでいくような性格を持っているので、板全体が常に動きまくろうとするあたりをどう制御するか、ここいらが問題でもあり、こういった動きが欲しい人には乗りこなしがいがあって、動き的にもたまらない板ではないかと思います。特にターンの後半においてこれだけの高い回転性を見せる板は、そう多くはないように思います。
選択の基準としては、際どい動きを好むチャレンジャーな人はSingleで、コントローラブルな中にも動作性能の良さを求める人にはC-DCが良いかも知れません。また、補足的な要素としては、比較的波のフェイスが荒れたところで乗ることが多い人は、C-DCを扱いやすく感じると思います。またパワーのないエリアでサーフィンすることが多い人にもC-DCはお勧めです。ただし動きの派手さについては、圧倒的にSingleがすごいです。過去にケリー実使用サイモンを入手したときには、ストリンガー脇にはSingleともC-DCとも書いておらず、Chopes
Rockerとだけ書いてありました。なので、どちらのモデルに乗っているかは分かりません。どちらでもないのかも知れませんが、ライディングの映像から推測するに、Singleをベースにしたモデルなのではないだろうか?とは思うのですが、、、(あくまで推測です!)
ちょっと調べてみましたら、Chopes(発音は分かりませんでした:一般に英語的に言えばチョプスかチャプスに近くなると思いますが、タヒチの正式名はフランス領ポリネシアですので、発音は英語的ではないかも知れません)とはタヒチのTeahupoo(チョープー)の別称のようです。その板がチョープー用にデザインされたロッカーで他にも何種類かのロッカーが存在するのか、チョープー用のデザインが調子良く、その後もこの呼び名で呼んでいるのか、具体的な名前の由来については全く分かりません。
乗り方についてですが、特にSingleの場合は、非常にルース性と回転性が高いので、逆に乗り手はしっかりレールを使って長くレールをホールドするようにした方がドライブを引き出せるように思います。本来が非常に良く動く板なので、特に無理な入力で回そうとすると、それなりに動きますが、パワーのない動きになる可能性もあります。まさにケリーがそうであるように、ボトムではしっかりとパワーをかけて、必要に応じてトリッキーな動きも織り交ぜていくようなメリハリのある乗り方が適しているかも知れません。先ほどもタッチはデリケートではない、とお伝えしたように、レールは繊細ではないので、しっかりとパワーをかけたいタイプのサーファーの方が、この板の持ち味は出るかも知れません。
XFC Singleを友人に貸したところ、オレには合わない、という返事が返ってきたことがありました。クセ、というのとは違うように思うんですが、たぶん、ターンのための予備動作を入れなくても動いてしまうことがあるSingleに違和感を覚えたんだと思います。板が自ら動こうとし、際限なく回転し続けようとするあたり、おそらくたまらなく好きな人と、そうでない人と別れるのではないかと思います。しかし、踏み込んでも飛び出しの満足感が得られないような歯ごたえのない板とは違います。どう言ったら良いのか良く分かりませんが、とにかくケリーのライディングにインスピレーションを受けちゃったような人には、チャレンジしがいのある板かも知れません。ははぁ〜ん、こんな板であんなことをやっちゃっていたのかぁ〜と思うだろうと思います。そこまでの過激な動きよりもまずは基本の動作をしっかりと高いレベルでできるようにしたい、という人には、C-DCではないかと思います。板を揺さぶり回転性に大きく寄与する重要なパーツであるロッカーがしっかりとしていて、それでいてテイクオフやスピードも良好、ジャンクにもある程度強いという部分で、C-DCはSingleとは違う完成度の高さがあるように思います。
言い換えれば、メチャメチャ動く板に連動して自分もどっかへ行っちゃいたい人はSingle、コントローラブルでありながらハイパフォーマンスな板を求める人はC-DCでしょうか。。。板の個性とは本当に面白いものですね。コンケーブだけでこんなにも違うなんて驚きです。
それにしてもケリースレーター。ラディカルなライディングの若手が台頭し、老練なベテランが去っていく中で、いったいこの人はどこまで行っちゃうんでしょうか。今後、ここまで凄まじく何回も勝ちまくる強いサーファーが出てくることがあるのでしょうか?少なくとも現時点では史上最高のサーファーの一人であると思います。私達は、こんなすごいサーファーが現役でチャージする時代に、地球の別のエリアでサーフィンできています。これってもしかしてすごいこと?と思うのは僕だけでしょうか?伝説はいつまで続くんでしょう。。。。
(2006/9/21)
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