File 18. DHD Dragon Flyer
この板はずいぶん前にテストを終えていたんですが、そのときは多忙であったためアップできませんでした。幸いにしてその当時コツコツとしたためた文章が残っていたので以下にまとめてみます。ちなみに数ヶ月前に発生したDHDの品質問題は現在完全に解消されています。現時点で届くボードのグラッシングはおそらく品質問題の発生以前よりも綺麗なくらいです。
Dragon Flyerはあまり知名度はありませんが、例えばDHDを検討されている方へのエントリーモデルとしてはStandard(D2)よりもむしろこちらを勧めたいくらい性格の良い板ではないかと思います。DHD
Standardも性格の良い板ですが、こちらは、より波がパーフェクトでない状況での走行性においてパフォーマンスを発揮しやすい板であるように思います。
DHDの説明によれば、「サイズが小さく、タルいビーチブレイク用のハイパフォーマンスボード」とあります。これを読むと、小波用ボードなのかな?と思いがちですが、どちらかと言えば、オールラウンドの板と考えた方が良いように思います。きっと波がコンスタントに頭くらいはあるエリアで言う「小波用」と、日本の標準的なビーチで言う「小波用」の定義がずれているんじゃないかと思うんですが、この板は普通に頭くらいまで余裕で対応します。DHDでは「2〜4フィートの波に適している」としていますが、これはだいたい腰〜頭ちょいオーバーくらいに相当するので、やはり、日本では小波とは呼ばない範囲の波になるかと思います。
沈んでしまいそうなほどの小波では、走行性の面でラウンドノーズ系の爆走小波スペシャルには及びません。DHDで言えばPunt
Flyerがこの手の板にあたりますが、パントプライヤーは本当に怒濤のごときイージーさで、これはこれで楽しい板ではないかと思います。ドラゴンフライヤーについてですが、対応レンジは、一般に言うオールラウンドの許容幅とほとんど変わらないと考えて良いかと思います。
パッと見はD2との違いが良く分からないほど似ていますが、D2よりもノーズとテールが1/4インチ広くなっているそうです。1インチが2.54cmですから、1/4インチと言えばたったの6mmちょっとです。たったこれだけの差で何かが変わるんだろうか?と思えなくもないですが、実際に乗ってみるとD2よりは明らかにガッツのない波での走行性が高いのが体感できるのは驚きです。
もう一つ、D2との顕著な違いは、テールに回転性を高めるヒップがあることです。このテールデザインはヒップラウンドスクエアとも呼ばれます。サイドフィンの手前までの幅がやや広めに取られていて、サイドフィン付近からは、アウトラインが直線的にテールに向かいます。広いテールで波のパワーをキャッチし、サイドフィンの両サイド付近から絞り込まれたアウトラインによって高いリリース性が得られるこのデザインは、アルメリックでも頻繁に採用されるデザインコンセプトですが、アルのそれほど極端な形状ではなく、パッと見では気付かない程度のものです。爆走性と顕著な回転性という面ではアルのMBMなどに軍配が上がりますが、滑り出しのナチュラルさや回転の素直さという面では、おそらくドラゴンフライヤーに好感を持たれる方が多いのではと思います。善し悪しというより好みの問題になるかと思います。サーファーである以上、板にある特定のサポートを求めるのはごく自然なことと思いますが、その度合いによって、自分の感性にしっくりくるテイストは違ってくるのではないでしょうか。バンプが付いているのだろうか?と思えるほどぎこちなさや違和感がない板については、ちゃんと感じられるくらい付いてないと意味がないじゃん!という人もいるかも知れませんが、ボッコボコのクソジャンクではさすがにバンプが過剰でないことに感謝したくなることもあるかも知れません。
この扱いやすさはロッカーの具合にも関係があるように思います。ボトムカーブはノーズ、テール、ともに比較的ナチュラルであると思います。フィンは色々と試してみましたが、ヒップがあるとは言え、スルスルと動くような板ではないので、比較的回転性が高めのフィンも合うでしょうし、板にどのようなテイストを加味したいかで選ばれると良いと思います。基本的にそれほどフィンは選ばないタイプだと思います。
板のバランスはとても良く、驚くほどテイクオフが早いとか、超回転性が高いとか、そういった飛び抜けたアピールポイントは特に持たない板だと思いますが、逆に大きなデメリットもなく、全ての性能がある程度高いレベルでうまくまとまっている感じです。ラスティーのスタンダードなどでも感じたことですが、いわゆる素性の良い板にあたる部類の板ではないかと思います。
サーフボードの人気は有名プロライダーが乗っているなどのイメージに左右されやすいですが、きっとどこかにこういった板が埋もれていて、地球のどこかで一部のサーファーがひっそりとそれを楽しんでいるのかも知れません。誤解しないでいただきたいんですがプロモデルは楽しいです。何が楽しいかって、シグネチャーモデルにはそのプロのライディングのクセみたいなものが色濃く反映されていて、そのサーファーの乗り方の一端を垣間見ることができるからです。プロモデルの中にも乗り手を選ばない板はあるので、選択にあたってそれほど慎重になることはないと思います。ただ、もし特定の好みがなく、単に乗りやすい、サーファーとしてのレベルアップに良い影響を与えてくれそうな板、ということであれば、きっと知られざる板が無数にあるんじゃないかなという気がします。良い板との出会いはサーファーにとっての永遠のテーマの一つではないでしょうか。
ここを読まれている皆さんの中にも、これまでに板をめぐる様々な旅路があったことでしょう。僕の中で、おそらく最も印象深い板の一つは、一番最初にサーフィンを始めたときに友人からもらった、ホームセンターで売られているような板でした。大きな「Billabong」というディケールが入っていましたが、正式なライセンスのもとで製作されたとは到底思えない感じの板でした。あの板を販売してよくビラボンからクレームが入らなかったものだな〜と思います。本当にビラボンがリリースしていたとしたら、あんなオモチャチックな板にはなっていなかったであろうと思えます。
その板は、友人も「サーフィンを教えてくれた人からもらった」と言っていたので、数々の無名新人サーファーを育ててきた新人担当教育係のような板だったに違いありません。知る限り、自分で三世代目になるはずですが、もしかしたらその友人にサーフィンを教えた友人の友人も、そのまた友人から譲り受けたものであったかも知れません。とにかく縁あって推定三代目謎のビラボンユーザーを襲名し、初めてのテイクオフへ向けての苦闘が始まったのでした。
その板は本当に難しい板でした。当時サーフィンというものについて何一つ分かっていなかった自分には、サーフィンってスンゲー難しいな〜と思われたのですが、今思えば、あんな板でよく波をキャッチしようとしていたものです。もし今、誰か初心者の人から相談をうけて、その人が同じ板に乗っていたとしたら、「そんな板捨てちゃえ」って言ってるかも知れないです。それくらい走らず、バランスが悪く、サーフィンよりむしろ小脇に抱えて歩くのに適したような板でした。
なぜそんな板がかくも強く印象に残っているのか。それはなぜだか分かりません。もしかしたらそれ以降に手にした全ての板と一線を画すような異質な板であったからかも分かりません。しかしサーフィンにおける最も衝撃的な体験をしたのもその板でした。
毎週毎週海に通っては水面を死んだ魚のように這いつくばっていた自分には、それはまさにディープインパクトな体験でした。突如として視界がガバっと大きく開けるやいなや、信じられないスピードで走り出したそのときは、まさに永遠の一瞬でした。人間が水の上に立って走ることができる、という事実を理屈を超えて理解した瞬間でした。
そんな体験をしてからはもう止まりません。板から落ちちゃ笑い、なんちゃってターンをしては周りの目もはばからず「ぅおぉぉぉーーーー!曲がった!曲がった!」と大声ではしゃぎ。雪の日にサーフィンしては「オレってコアなサーハーだな〜」と悦に入り、それから今日までサーフィンとは離れられない日々を過ごしてきました。
胸のすくような朝焼けや夕焼け、水面の輝きや波の造形、様々なアクシデント、自然の驚異、サーフィンに凝縮される言葉にできないほどの数々の魅力。そんな、それまでの日常で出会ったあらゆる娯楽とまるで違っていた信じられない世界を初めて見せてくれたのがあの板でした。しかしあの板でなければ今の自分はなかった、と言うほどでもなく、むしろあの板でなかったらもっと早くうまくなっていたに違いない、と思うくらいです。しかし、とにもかくにもサーフィンを始めた当初からいわゆるマイボードというものにありつき、何の気兼ねもなくそれなりに思う存分サーフィンを楽しんで来れたのですから、それはそれで感謝すべきであるのかも知れません。
それにしても相当長く乗っていたにもかかわらず、自分にはあのボードをリペアした記憶がありません。アレはホントにサーフボードだったんでしょうか。どこかのお店のディスプレイだったのか、それとも宇宙人がめぐまれない田舎の若者にくれたプレゼントだったのでしょうか。。。。今もあのボードはどこかでめぐまれない若者の夢をかなえているんでしょうか。。。。
。。。。。さすがにそりゃないかな (^−^;)
今年も色々なことがありました。おそらく今年はこのコーナーを更新できるのはこれで最後になるでしょう。皆様からは沢山の温かいご声援をいただきまして、本当にどうもありがとうございました。また来年も沢山の素晴らしい魔法の乗物と出会えることを願いつつ、サーフィンを愛してやまない全国の皆様、素晴らしい年をお迎えください!とりあえず年末年始の休暇は、メシ食ってサーフィンして寝てください!
(2006/12/8)
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