File 20. Simon S4F

 

Simonのクワッドフィン、S4Fに乗ってみました。Simonから出ているS4をより小波向けにアレンジしたモデルのようで、公式の説明では「究極の小波ファンボード」とあります。実際に乗ってみた印象としては、特に小波だけということでもなく、ある程度の範囲で楽しく乗れる板、という感じを受けました。むしろ、小波に特化して検討するなら、さらにもっとフラットな波を得意とする板は、他にも見つかるであろう、とも思われます。

というのも、最近更新した癒しの写真館をお読みいただいた方なら察しがつくと思うのですが、オーストラリアシェイパーの考える小波、というのは、だいたい日本で言う腹〜胸くらいと思っていただいたら良いのでは?と思うのです。ですから、このS4Fも、日本での使用を想定する場合、ある程度のオールラウンド性は備えている、と考えても良いように思います。ロッカーを見ても、いわゆるフラットな波を対象とするフラットな板ではなく、しっかりとしたカービングができるように作ってあるように思います。レールはボキシーっぽい感じですが、普段サイモンで乗り慣れている人なら違和感はないでしょう。スワローはやや浅めです。

既にクワッドの評判を耳にされている方も多いと思いますが、やはりテイクオフが早く、加速性も良い、というのはこのサイモンS4Fについても言えるのではないかと思います。ただ、このテイクオフ性能と加速性が、どうしてもクワッドでないと得られないレベルのもの、という風には自分は思いません。トライにも非常にテイクオフが早く加速性が高い板もありますので、一概にクワッドだから、トライだから、という枠ではくくれないように思います。

誤解されないでいだきたいのですが、このS4Fは必要にして十分な良好なスピード性とスムーズな加速性を備えた秀作であると思います。人から聞いたことですが、サイモンのクワッドは完成度が高く、それを参考にするシェイパーもいるのだとか、、、

いつもこのコーナーではお伝えしていることですが、他の方がこの板に対してどのように感じるかは、自分は無責任でいたいと思いますので、そのことはご了承くださいね。

というわけで、自分的コメントですが、テイクオフに関しては、確かに良好な性能を持っていますが、たとえばオーストラリア的な小波ではなく、日本的な本当にフラットなスネ〜ヒザの超小波等で大それたレベルのテイクオフを期待するなら、ラウンドノーズ、またはEPS素材のもので相当にイージーなものがありますので、そういったボードなどを選ばれた方が無難であるかも知れないです。対象とする波が超小波でない、いわゆる普通の小波であれば、細身のオールラウンダーでもテイクオフ性能が非常に高いものがありますので、クワッドが絶対的な選択肢であるとは、自分は思わないです。

繰り返しになりますが、S4Fのテイクオフ性能は十分に良好ではないかと自分は思います。ただ、メールで「夢のような板なんですか?」という質問をいくつかいただいたので、それに対して正直にお答えするには、このように書くしかないのです。世の中には無数のサーフボードがあり、その中で、特定の性能がダントツに優れているかどうかは、ディメンション、乗られる人の技量、使われる波質などでも変わってきてしまうので、正確な判断は難しいです。

立った後の板が走って行こう、抜けて行こうとする性能は大変良好であると思います。なにもしないでもスムーズですが、特に乗り手が自分でプッシュを入れたときに、スイスイ抜けていきます。センターフィンがないので、板がクルクルと回転方向にだけ動いてしまい、パワーが抜けてドライブがかからないのでは?という心配もありましたが、これは全く問題なく、きちんとドライブはかかり、レールの広い範囲を使ってしっかり踏めば、ちゃんと前方にもグイッと伸びてくれます。この点は、想像していたよりもはるかに良かったです。

ターン時の扱いやすさも特筆すべきところかも知れません。これがクワッドか!と感じた点は、自分的には、むしろこの点でした。トライと比べると回転の軸がトライとは別のところにあるので、確かにフィーリングは違います。クィックなトップターンをメイクした直後のバランスとスピードは、トライと比べてもポジティブな意味で異質であるかも知れないです。クワッドは違った乗物で、トライとは異なる乗り方が求められる、というコメントを聞いたことがありますが、乗り方自体は、さほど難しくはなく、むしろイージーではないかな〜?という印象を受けました。ただ、回転時の軸となる位置がトライと少し異なるために、ライディング時に板から受けるフィーリングが少し違うように思います。

トライの回転の軸が、一般的にはテール付近にあるのに対し、クワッドの場合、ターンする側の前方のサイドフィン付近にあるように思います。つまりトライよりもやや前方、ややイン側に軸が寄っている感じです。しかしながら、後方の小さなフィンのおかげで思ったほどスルっと抜けるような感じはなく、小さな半径のターンをシャープにキレ味良く描けます。

ちょっと極端なたとえになりますが、ダーっと真っ直ぐ走っている状態から、突然、地面から立ちあがっている支柱か何かに手を伸ばし、片手で棒を掴んで、そこを起点にグルン!と一気にターンするイメージ、といったら少し分かりやすいでしょうか?これはあくまでも「極端なたとえ」ですので、ご注意くださいね。実際にはそこまで過激なターンになることはないです。

軸が板の中心ではなく、サイドに寄っているにも関わらず、小さな半径のターンをしても安定性が高いのは、おそらく、軸の位置がトライよりやや前方にあることに加えて、2本のサイドフィンによる食い付き性能が高いせいではないかと思います。

地上での運動にたとえると、仮に、砂の浮いたスリッパリーな路面を走りながら極度に半径の小さいターンをするとします。そのときに、自分のバランス感覚だけで向きを変えるよりも、もし内側に支柱が立っていたら、そこにつかまってグリンと回っちゃった方がイージーだし、ズレも生じず、回った後も棒から放り出されるように飛び出すことができるので、スピードを持続しやすいのではないでしょうか?板自体(走者自身)が円盤のようにスピンしてしまう場合は、こうは行きません。これは極端なたとえですが、自分が感じたクワッドのターンというのは、これに近いイメージです。小さく回っても、パワーをロスしたり、ブレーキがかかったりすることが少ない、というか、あっても最小である、というイメージです。

クワッドに対しては、いわゆるクセ的なコメントを聞くことも多かったので、多少心配していたんですが、タイトにターンしてもボードを足元に保持しやすく、取り回し的にはラクチンではないかとさえ思いました。どんな状況でも、ボードを身体に近いところにキープできるのは、サーフィンにとってはあらゆる状況で好ましいアドバンテージです。この点で、クワッドは乗り慣れてさえしまえば、比較的クリティカルなセクションにも強いのではないだろうか?と思います。

いわゆる小波系の板には、テールの抜けが強すぎ、小さな半径で弧を描けても、クルっと回った直後にその場でスピードを失ってしまうものが多くある、と感じられている方も割りかし多いのではないでしょうか?トップターンは鋭く、小さくできるのに、その場で一瞬止まってしまい、その後、ボードの浮力やボリューム、またはライダーの必死の落とし込みによって再度、トップからの加速を開始する、という状況を経験された方も少なくないように思います。つまりトップターンとその後の加速がプツっと切れてしまっていて、全く別の動作になってしまう、という状況です。

ところが、クワッドのトップターンは非常にシームレスです。仮にテールだけでトップをえぐったとしても、そこでスピードが途切れることがなく、ちゃんとノーズが向いた方向に向かってギュイーンと板が押し出されていきます。パワーのない波であっても、テールの抜けによってライディングが突然終了する確率が低くなる、という点は、クワッドの美点の一つだと思います。どうか誤解されないでいただきたいのは、こういった性能がトライにはない、ということでは全くありません。一部の小波系ボードにありがちな極端なテールの抜け、のようなものと比較した場合、かなりポジティブな性質を備えている、と感じるわけです。

ノーズがズコーン!と波のトップから飛び出してしまっても、インサイドのフィンさえ引っかかっていれば、そこだけを起点にグリンと回れます。仮に意図する度合いよりもスパッとクィックに回っちゃったとしても、板を足元に保持しやすい性質があるために、意外にも安定を保つことができます。

自分はこのS4Fをグリグリに掘れた波では試していません。ですので、そういったセクションでどんな反応を見せるかは分かりませんが、一般にクワッドが得意とするとされる範囲の波では非常に扱いやすく、高い性能をイージーに体感できる板であると思います。

そうそう。クワッドに乗るにあたってもう一つ、ジャンクでの性能がどうだろうか?とも心配されたのですが、これについても、全く問題はありませんでした。センターフィンがないことによって安定性が低いということもなく、スピンアウトしてしまうほど過剰に反応したりということもありませんでした。強いて言えば、パドル時の安定性はトライより低く思えたので、初心者の方でしたら、広めの幅で乗られた方が居心地良く感じられるかも知れません。今回乗った板は小波用に幅広の設定となっていたためにスタビリティには全く問題はなかったですが、クワッド+細身、の設定ですと、少し気になる感じにはなるかも知れません。

色々な優位点について挙げてみましたが、トライに対して圧倒的に優位であり、今後、トライに取って代わるシステムである、というほど大げさなものであるとするには時期尚早で、どちらかと言えば、バリエーションの一つとして定着し、安定して普及するであろう、という風に思います。トライにもクワッドにもお互いに持ち合わせていないメリットとデメリットがあり、どちらも完全無欠ではように思います。

ここまでクワッド、クワッドという書き方をしてしまいましたが、自分はクワッドに対しては本当に初心者です。実際、サイモンのS4Fにしか乗ったことがなく、他のシェイパーのクワッドがどうかは全く未知の世界ですし、S4Fに対してはバランスの取れた完成度の高い板であると思うものの、まだまだ完全に把握したとは言い難いです。ポジティブな性質の回転性は感じましたが、皆さんからいただく色々なフィードバックを拝見しますと、クワッドに対してポジティブな印象を持たれる方、逆に懐疑的な見方をされる方、などなど、様々です。ただ、S4Fに関しては、サイモンの公式の説明にある「小波ファンボード」という説明が当てはまるイージーなフィーリングを持っています。一方で、ある程度パワフルな波で使うなら、トライのセンターフィンでテールをグァゴ〜ン!とえぐりたい人達には、ちょっと寂しいものがある、と思えるかも知れないです。

ちなみに自分からS4Fをお譲りした方からは、「特別最大スピードが速いというより、初速からのスピード感に優れていてターンする度に、加速していく感じが一番の良さかなと感じました。」「最初から最後までスピードがロスする場面はなかったです。」「総論としてはサイモンの言うとおり小波においてめちゃめちゃファンな板です。」といったコメントをいただきました。自分が感じたものとかなり近い印象であるように思います。

お互いにない性質を持ち合わせている異なるシステムなので、おそらく、どのシステムがベストということはなく、お好み、または適材適所で使うものなのだろう、という気がします。究極の選択肢となり得るかどうか、ということよりも、むしろ、使い分けを検討された方が楽しくサーフィンできるかも知れないです。最近多くいただくクワッドに対するお問い合わせに対して、答えることができているかどうか分かりませんが、参考の一つとしていただければ幸いです。

(2007/8/23)

 

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