ウッディジャックに会いにオーストラリアに行ってまいりました。ウッディは普通のどこにでもいるオージーといった感じで、話しやすい人でした。屈託のない、シンプルなライフスタイルの人、といった感じでしょうか。結局、自分から見るオージーは、滞在期間中、こんな人達ばかりでした。

ウッディが3日間ほぼ付きっきりでポイントやらファクトリーやらを案内してくれたのでレンタカーも借りず、始終、気持ち古めかしいウッディのバンで移動しました。今や日本では絶滅危惧種に指定されそうな重ステのバンは、見た目以上に快調で、走りは堅実そのものです。レトロとかビンテージとかいった付加価値のある古さではなく、実用的な古さを感じさせるニッサンの車で、ウッディによる自前ペイントが施されています。ウッディは車職人ではないので、ペイント面はざらざらで艶がありません。オーストラリアではなんの違和感もなく見えますが、日本で見かけたら、割とワイルドな部類の車に見えるに違いありません。おそらくは、ペイントを施す以前は今以上にラフなルックスであったのだろうと想像されます。

渡豪前からウッディには、自分は楽しみに行くんだから人と波を取り合うのはイヤなんで、ファンなポイントを案内してくれ、と言っていたのですが、結局連れて行かれたのはスナッパーロックス、クーランガッタビーチといった世界的にも知名度の高いポイントでした。他にも入りはしませんでしたが、ポイントをチェックしながらバーリーヘッズ、キラ、などのコアなポイントを回りました。これらのブレイクが車で10〜15分程度のエリアに集中しているのは驚きです。サーファーズパラダイスと呼ばれる市街地付近のエリアよりも、やや南方のこの近辺の方が事実上の「パラダイス」に近い気がします。ただサーファーのレベルは異様に高く、波取りも熾烈なので、自分には「楽園」というより「虎の穴」という印象が強いです。


写真はポイントチェックのときに立ち寄った、確かバーリーだったと思います。

最初に連れて行かれたのはスナッパーでした。「オーストラリアに来たら少なくとも1回はここで入らなきゃ」という勧めで、「それもそうかな?」という軽い気持ちで入水したのですが、結局連日このあたりの非常にレベルの高いサーファーが集中するポイントで入ることになりました。

いざ入ってみると非常に強いカレントでパドルがとても疲れます。スウェルの向きいかんでは、いつもこんなに流れが強いわけではないらしいのですが、滞在期間中は南からのスウェルが北に向かって入り込んでおり、海岸線に沿って横方向に強い流れが入り続けていたので、同じポイントでサーフィンをし続けるためには、その流れに逆らって遡上するか、歩いてポイントまで戻るしかありません。スープのシャバシャバが横に流れていく速度を見ると、こりゃ川の流れだなと思えます。自分は普段、仕事で頭がテンパったら小一時間ほど抜け出して軽く海でリフレッシュするのが週1〜多くて3回、週末は家族に捧げるいわゆる普通のおとうさんサーファーです。ですから、これは本当にキツかったです。しかも波のパワーがあまりに違いすぎます。週にマックスで3時間しかしないサーファーがいきなりこんな環境で連日やらされちゃうんですから、たまったものではありません。帰宅後、人の身体をまさぐるクセのある長男から「パパ、オッパイ大きくなったね」と言われました。そりゃオッパイも大きくなりますって。もう少し長期間滞在したらデカパイになっていたかも知れないです。

日頃から「なんちゃってサーファー」を自認するアタクシですが、オーストラリアでは「なんちゃって」のカテゴリーにすら入れてもらえない、ってカンジ?

今回のトリップでは連日波に恵まれましたが、ウッディは3〜マックスで4フィートくらいの波、と言っていました。波の高さを測る基準は国によって大きく違います。ハワイでは波の裏側で計るので、数値は小さくても波はとても大きいのが実情です。「ちなみにここで言う3〜4フィートってどれくらいのことを言うの?」と聞いてみると、「おおよそ1フットは1メーターと思えば良いよ」ということでした。厳密に言う「1 foot」は30.48cm、つまり約30センチでしかないのに1メートルと考えれば間違いないと言います。「ぜんぜん理屈が合わないけど、でもここではそういうものなんだ」とウッディ。普段の自分は、日本でかなり貧弱な波であっても構わず入水します。そういった波は、こちらの人的に言う、サーフィン不可能なシャバシャバ、という感じなのだろう、と想像します。

ウッディが出身地のアンゴーリのことを少し話してくれました。アンゴーリは地形が色々な角度で突出しているため、あらゆる方向のスウェルをひろい、波質も豊富であるようです。そこでは波の裏の高さがゼンゼンない波が立つこともあるそうです。波に裏がない、ということは、想像を絶するような水量が塊で押し寄せてくることになります。本当にとんでもないことです。

ウッディがまだ当時のマスターのところでシェイピングを学んでいた頃、マスターがアンゴーリに来て一緒にウッディのためにガンを削ったことがあったそうです。板が完成した翌日に12フィートの波が入り、地元の友達が誰も嫌がって入らなかった日に、「せっかく削ったんだから、行くなら今しかない!」と一人でアウトに出てサーフィンしたのだそうです。サーフィンに関してはことさらタフなオージーが出ていかない日の波っていったいどんななんでしょう?ウッディに12フィートってどれくらい?と聞くと、差した指は電柱の上を行っていました。その波はハワイから来たサーファーをして、こんなヤバイの向こうでもないと言わしめるほどの波であったそうです。おそらく、全くないということではなく、希にはあるんだろうと推測しますが、いずれにしても相当危険と思える波であったのでしょう。着替えのときに見たウッディの身体には、無数の傷、それもただの擦り傷、切り傷の部類ではなく、ヘビーなケロイドがあちこちに見られました。

こんなことを書くと、ウッディって強面のタフガイなの?という印象を持たれてしまうかも知れませんが、全くそんなことはなく、むしろその逆です。内面、外面、共にいたって穏やかな、黙って日本を観光していたら、きっと誰もサーファーであると気付かないようなタイプです。肌の日焼けのことを、英語で「tan(タン)」と言います。最近忙しくて頻繁にサーフィンしていないウッディの白さを見て、仲間内は「factory tan(工場焼け)」とからかうのだそうです。ですからいわゆる日本のファッション誌に登場するような「ナンカ、ちょっとサーファーっぽクナイ?」というスタイルからはとても外れています。

日本的なサーファー像、というのは、思えばとてもヘンなものなのかも知れないです。過去にカリフォルニアでホームステイしたとき、現地のダドやマムに「僕はサーファーだけど、別にチャラチャラしてないよ」という内容のことを言ったら、「それどういうこと?」と聞かれました。向こうでは老弱男女、幅広い層のサーファーがいて、中には医者や建築家、弁護士など、比較的ステータスの高い人達も多かったからです。ですから自分のコメントは全く意味不明であったに違いありません。

今回、実質の滞在期間は2泊3日というスーパーショートトリップでしたが、おそらく、オーストラリアでのサーファーの地位は、アメリカの比ではないくらい確率されていて、もっとナチュラルな存在として日常に根付いている気がしました。若い子達は普通に学校に通うようなレベルでサーフィンに行く感じですし、ちょっと得意な子は小さな頃からコンペにも参加しているようです。あるポイントで話をした人は60近くで、もう40年以上もそこでサーフィンをしているそうです。笑顔でちょっと自慢げに「数え切れないほどの良い波をゲットしたよ」と話してくれました。国民的スポーツ、というのはまさにこういうことを言うんだろう、と感じます。

ウッディはいずれ日本に来る、と言っていますが、そのときには絶対に皆さんに紹介したいです。それはそれは本当に愛すべき人柄の持ち主です。先ほど紹介した内容は僕が会話を要約して書いてるだけであって、たまたま話の流れでそういう話題にならなければ自分からひけらかしたりはしないし、もちろん取り立てて隠したりもしませんが、話してもなお、自分がすごいサーファーであるとはこれっぽっちも思っていないのです。たぶんウッディが自分自身感じていることは、自分はとてもサーフィンが好きだ、ということだけではないでしょうか。

続きはまた次回の「癒しの写真館」で。

(2007.7.20)

 

 

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