前回の「癒しの写真館」をご覧になった方々から、トリップは成功だったようですね!というメールをいただきました。いつもSFLを気にかけてくださいまして、どうもありがとうございます。確かに色んな面で実のあるトリップだったんですが、実は自分のサーフィンは、すっごくダメダメでした。皆さんに自慢できる武勇伝は一切ありません。率直に言って、自分のサーフィンが全く歯が立たなかったというか、ロクにサーフィンすらできなかった、というのが本当のところです。

ここでのサーフィンのレベルは凄まじく高く、自分が普段入るポイントで見かける「あ、この人うまい」と感じる人達のレベルよりも1ランクも2ランクもうまい人達がウジャウジャいる感じです。

いわゆる日本的に言う「サーファー系」的ルックスからはほど遠い、どこにでもいる普通のぽっちゃりしたオッチャンが弾丸のようなスピードでボバーン!と接近してきて、凄まじいパワーでジャゴーン!とリップを炸裂させて行きます。そのスプレーを至近距離で食らうと、まるでほおにビンタか張り手を食らったかのような重い衝撃を覚えます。あるいは、これって水なんですか?と疑いたくなるような刺すような痛みを感じます。マディ、ナンカ、スゲー違う世界に来ちゃったナァ〜モ〜、ってカンジ?

日本では、うまい人達って、いかにもうまそうな精悍な顔立ちや体つきをしていませんか?こちらではそのようなことが全くないんですね。見るからにフツーのおとうさんっぽい人達とかが、スンゲーうまいんです。

こんな感じのサーファーがほんの一握りではなく、ボーイズ/ガールズを含めたキッズからシニアまでで、おおよそ7割くらいを占めているように思います。これは自分が滞在した期間に特有のことであるのか、それとも普段からこんなであるのかは分かりません。初心者とおぼしき人は全く見かけませんでした。強いて言えば、あそこでは自分が最も初心者らしかったように思います。その約7割以外は、いても日本で言う中〜上級くらいの人達が少数と、オージー的に見てもスーパーなレベルの人達が少数、といった感じのように見受けられました。カリフォルニアでもハワイでも、日本の平均的なポイントよりレベルはかなり高いように感じたのですが、ここでの感じは、ちょっと違いすぎる、といった印象です。

しかし、かと言って、これだけうまいサーファーがわんさかいるにも関わらず、いわゆる「オレ様」的サーファーが全くといって良いほどいないのが不思議です。日本でしたら、「オレってうまいから寄ってくるんじゃないぜ」的な臭いオーラを放ちながら我がもの顔でオラオラとサーフィンする人が少なからず1人か2人はいたりしますが、そんな人達よりもはるかに上を行くであろう凄まじいサーファーがゴロゴロいて、何の威圧感も発することなく、ごくごくフツーにサーフィンしています。オージーの気質なんでしょうか。それとも全体にレベルがとんでもなく高いせいでしょうか。ミックやパーコやディンゴを育んだ環境がこのあたり、というのも、うなずける気がします。日本でも身近なポイントにミックみたいなサーファーが普通に入ってたら、ちょっとばかしうまくても、小さなお山の大将になど、なり得ない気がします。日本のサーフィン文化を否定するわけではなく、あまりに違うんで、すごく違うんだなぁ〜と思わずにはいられないわけです。

ウッディがエアをしているのを何発か見ました。ウッディ以外であのサイズの波でエアをやっていたのは1人か2人しかおらず、自分的には、エアってこんなにサイズのある波でやるものなのかなぁ〜!???って感じです。ウッディいわく、ここいらにはスポンサードされているキッズが多いけど、なぜか自分の地元のアンゴーリに来るとゼンゼン乗れてないんだよ。スポンサードされるならどんな波でも乗れなきゃダメだよね。ってことでした。こんだけ乗れてるのに、まだダメ出しされちゃうなんて、どうなってんの?オーストラリアってカンジです。「仕事が忙しくて、身体がフィットしてないよ」と言うウッディ。フィットしちゃったらどんなになっちゃうの?って素朴な疑問が頭の隅にプリッ?と沸いてきます。

さ、そろそろ、オーストラリアにおける自分の悲しい記憶について語りたいと思います。ナニがダメって、まずパドルがダメでした。そしてテイクオフがイケてませんでした。ライディングも、ライディングって呼べるの?ってくらいダメダメでした。

え〜、、、、、ハッキリ言って、良いとこないです!

はるばる飛行機でやってきて、一体ナニしにきたんだろうナ〜?ってな具合です。

ただでさえ競争率が高くなかなかアタックさせてもらえない、ということもありますが、アタックしても、波を捕まえられなかったり、捕まえても直後に巻かれたり、飛ばされたり、こりゃサーフィンになっとらんでしょ?というくらいハズカシイ有様で、おそらく現地の人達からすれば、もうちっとスープのシャバシャバで遊んで来い!って感じだったんじゃないかと。。。。

オーストラリアでの経験が長い人から「向こうでは刺し乗りすると吹っ飛ばされちゃうんで、刺し乗りができない」と聞きましたが、その意味がよ〜く分かりました。一度めくれ始めると一気に掘れ上がるので、おそらく、もっと奥のウネリから狙って全開でパドルするのがベターなのだろうと思います。掘れ始めた波を軽いパドルでキャッチして行こうとするのは、ちょっと無理じゃないかと思います。あとウッディは別に長い板はいらないよ、と言っていましたが、それはウッディくらいのレベルの人の話であって、普段より数インチ長い板を持ち込んでいたら、もっと重宝したであろうと思われます。

ここでの波は自分が今までに経験した中でも最も速い部類であったと思います。しかもそれがえらく長距離続きます。長距離ですけど、速いんで一瞬です。おそらくチューブライディングが好きな人には、至上の波であるに違いありません。いったん掘れ上がると、目の前に垂直のロングウォールが立ちあがり、眼がついていかないほど超速です。自分はと言えば、巻かれたり、吹っ飛ばされたりで、メイクうんぬんよりも以前の、サーフィンになってない状況、とでも言いましょうか。。。。否応なしに、自分って、こんなにヘタでヘタレだったんだ!って事実を突きつけられてしまいました。

後でウッディが、ボトムに下りすぎている、というアドバイスをくれました。チューブではボトムに下りすぎず、波のパワーがあるやや上方にポジションをキープして、推進力を得るために常にテールを上にしておいた方が良い、ということでした。

まあ聞くのは簡単なんですが、聞いたそばからマスターできるほど簡単じゃあありませんやね。ただでさえスーパー速いブレイクですが、おそらく、ポジショニングだけでなく、さらに自分で加速できないと抜けるのは難しいように思います。

ウッディは、スナッパーやクーランガッタのようなポイントでカレントが強いときにパドルで戻るためのコツも教えてくれました。ライディングの後は、もう一度ライディングを開始したい地点に向かって、最短距離で斜めにパドルして戻りたくなりますが、それだとカレントのパワーをもろに受け、なかなか進まない上に、セットが入ると一気に岸に押し流されてしまうので、大変効率が悪いのだそうです。戻るときは、自分が乗り始めたい地点に向けて斜めに進むのではなく、いったん沖に向かって縦にパドルし、ある程度沖に出たら真横にパドルする、といったようにジグザグに進んでいった方が楽、とのことでした。実際試してみると、本当にこちらの方が楽で、今まで相当なエネルギーを浪費してしまっていたことが分かりました。といっても、自分にはこの環境で華々しいデビューを飾るに相応しいパドル力がなかったことは、自分が良く分かっております。

波取り、という点で、ローカルサーファーの波の見極めの凄さには目を見張るものがありました。かなり遠方から猛スピードでロングチューブを抜けてくる姿を目にすると、自分などはその時点で戦意喪失してしまうのですが、見極めのうまい人は、乗ってくるサーファーがメイクできるか潰されるかを瞬時に見極めて、潰されると見るや否やバトンタッチするかのごとくチューブインして乗っていきます。波が速いので、潰されたのを確認してから突っ込んでもキャッチできません。潰されることを予測してパドルを開始しているのです。間違って激突でもしようものなら大変な事故になる可能性大ですが、それができてしまうのは、ナゼ?って感じです。

どのサーファーもスーパーうまいので、自分からは、なんというか、乗ってくるサーファーがメイクしない気がしない、くらいに見えてます。落ちたところを狙って取って行こうなんざぁ、あまりに大逸れていて、思いもよりません。自分はと言えば、超うまいサーファーから超うまいサーファーへと、めくるめくチューブを余すことなく常に誰かが乗り継いでいくという壮絶な光景を、緊張感を持って眺めているのが精一杯でした。日本でも自分は割りかしジェントルなサーファーだと思うのですが、ここでは尚のこと邪魔になっちゃいけねぇや、とビビリが入りました。もし失敗してドロップインでもしようものなら、と考えただけでもゾッとします。ローカルサーファーのこのへんの見極めについては、もう脱帽という他はないです。

普段サーフィンをしていると、体感速度が速い、と感じることはありますが、ここのサーフィンのスピードを見ていると、絶対速度が大変に速いのではないだろうか?と感じざるを得ません。

とにもかくにも、一般のおとうさんサーファーがあそこで思うように波を取ろうと思ったら、相当な場数を踏まないと難しいように思います。ウッディいわく、日本のプロサーファーでもこっちの波で乗れるようになるには1ヶ月くらいはかかってるんじゃないかな?とのことでしたので、自分のようなごくごく普通の一般サーファーが3日で攻略できるワケがありません。

しかし、にも関わらず、最終日にビーチを後にするときは、後ろ髪引かれる想いでした。巻かれようが、放り投げられようが、何度でもあそこに戻ってサーフィンしたい、と思うのはあのチューブをメイクしたら筆舌に尽くしがたい感動が得られるのでは?という予感めいたものがどこかにあるからです。あの衝撃的なスピードだけでも忘れ難いものがあります。

ウッディが乗り終えた波について「今のは波がよれてた。良くなかったよ」とコメントした波ですら、ハタから見ていた自分からすれば、普段日本で乗っている波に比べたら、スーパーパワフルでスーパークリーン、スーパーロングライドできる波です。今の波のどこが良くないのヨ!ヴィンヴィンドライブかけながらはるか彼方まで乗って行っちゃってたじゃないのヨ!ってカンジです。こんな環境で普段からサーフィンできるなんて、マディ、すごいヨ!って心の底から思います。が、同時にコレよりももっとサイズ上がっちゃったらスゲー過酷なんだろうなぁ〜とも想像します。

有名な話ですが、大きなスウェルがヒットすると、スナッパーから隣接するクーランガッタ、キラまでつながってすごいロングライドができる、という話をウッディもしていました。ウッディによれば、そんなときはスタンディングチューブでハイになっちゃって、ウハウハと笑いが止まらなくなり、時折振り落とされそうになるのを我にかえって修正しつつ、永延とウハウハ、ウハウハと笑いながら乗り継ぐのだそうです。以前、この付近に住んでいたことがあって、スナッパーからライディングして家に帰ったんだ、と言ってましたが、それってすごい距離なんじゃないかと思います。ちょっくら隣町までバレルくぐって行ってくるよ〜!みたいなカンジでしょうか、、、、

最終日の夕暮れ、海から上がってくるとウッディがバンで待っていました。ちょっと疲れた様子です。普段仕事が忙しく、こんなにぶっ続けでサーフィンをすることがないウッディは、海の中でも身体がキツイと漏らしていました。

ウッディが「楽しんだかい?」と聞くので、「あんまり乗れなかったよ」と言うと、「だから、楽しんだかい?」と切り返してきます。「サーフィンは全くダメだったけど、楽しんだよ。すごい経験をした」と答えると、ウッディがボソっと言いました。「だったら良かった。他の誰かが自分をどう見るかなんて気にしちゃダメだよ。大切なのは自分が楽しんだかどうかなんだから」

自分はときどき、大切じゃないことに必要以上のエネルギーを注ぎます。本当に大切なことは忘れてしまって、大切じゃないことを気に病んで生命のエネルギーを無駄にしている気がします。ウッディのスタンスは、少し心に響くものがありました。幸せには尺度がなく、誰も本当のことなど分かりません。ですが、ウッディの物の見方は、自分はとても好きです。

着替えながら他愛もない会話をしました。例のスイッチして次から次へと複数のサーファーが乗っていくことについて、ウッディは「ケリーとかすごいサーファーがここでやるのを何度も見てるけど、あの人達だって落ちることが沢山あるんだよ。沢山だよ。すごいサーファーだってみんな落ちるんだ。だから絶対に乗れないなんてことはない。チャンスはあるんだ」と言っていました。言っていることはとても良く分かりますし、救われた気持ちになりましたが、にしてもケリーが走ってきたら、たぶん自分は引いてます。でもそれは謙虚さとかではなくて、今の自分には技量にしても心構えにしても、必要な備えがないと分かっているからです。ウッディだったら、分かっていても少なくともトライするべきだよ、と言うかも知れませんね。

「なぁ、ヤス(自分の海外でのあだ名です)」と言ってウッディがバンの荷室の隅に転がっていた小さな黄色い物体を取り出しました。それはタンポポくらいの大きさの小さな黄色い花でした。茎がなく、柄が付いているだけの花で、少し硬そうです。タンポポとは違い、花びらの先端がちょっと尖っています。

「これはエバーラストって呼ばれる花なんだ。根っこも葉っぱもないのに朽ちることがないんだよ。普通の花ならボロボロになっちゃうだろ?ずーっとこのままなんだよ。」とウッディ。確かに普通なら少なくとも水に挿すとかしないとすぐに枯れてしまいますが、この花は不思議なことに鮮やかな色合いを保ったまま、そのままの形で残ってます。しかも押し花とかでないのです。everには色んな訳し方がありますが、このコンテクストで訳す場合は、永遠に、が良いでしょう。lastは、ここでは、持続する、または、持ちこたえる、とすべきだと思います。「Everlastっていうのは、ずっと残るから?」と聞くと「そう」という返事。思わず笑顔で「まるで僕らのフレンドシップみたいじゃないか!」と返すと「そう。これはアンゴーリに咲く花でどこにでもあるものじゃない。今度帰郷したら必ず取って来るから、そしたらヤスに送るよ。だから日本に戻ったら自分が約束を忘れないように、たまに想い出させてくれ。いいかい?」とウッディ。

この約束は絶対に忘れないです。エバーラストも別に手元に届こうが届くまいが関係ないです。もう既に頭の中にあって、消すことができないです。

さて、次回の「癒しの写真館」では、サーフィンの合間にウッディが見せてくれたファクトリーについてご紹介したいと思います。ウッディとウッディのグラッサーがいかにクォリティの高い仕事をしているかについてご案内します。自分自身が多少の気泡とかボード上の傷とかを全くと言って良いほど気にしないタチなので、正直あまり期待はしていなかったというか、別にどんなものを見せられても驚かないだろうと思っていたのですが、ところがどっこい!整頓された綺麗な作業場で大変丁寧に作業していて、実際、魂のこもった仕事をしていました。

そうそう!スナッパーロックスの「スナッパー」って「鯛」って意味だったんです。食いました!うまかったです!ウッディが連れて行ってくれたのは、よそ行きのレストランは最終日前夜の1度だけで、あとは全て庶民的なところばかりでした。スナッパーを食べたのも地元の人が晩ご飯のおかずなどを買い出しに行く小さな魚屋さんで、その場で調理してくれるところでした。スナッパーは出来たてのアルミホイルの包み焼きをいただきました。茹でた車エビも食べましたが、こいつもまたうまかったです。レストランよりもこういうところで素朴な味をいただけたのは、とってもありがたかったです。いつか、今はまだ数少ないウッディユーザーの皆さんですが、希望される方がいらしたら、ウッディのガイドでツアーを組み、こういったリアルオーストラリアを肌で感じていただくのも楽しいかなぁ〜?と思うんですが、ウッディのブートキャンプは過酷ですので、パドルを鍛えておいてください。

冗談です。そのときは、本当に波が有り余っているファンなポイントに案内してもらい、ウハウハと笑いながらサーフィンしましょう。それと、今回自分もウッディに重要なライディングの改善点を教わりましたが、これがすごくありがたかったです。こんな体験をみんなでシェアできたら楽しいだろうな〜とも思うわけなんですね。それではまた次回の「癒しの写真館」で!

(2007.8.3)

 

 

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