第8回 加速するゾー!ホントだゾー!

 

本当に多くの人から、加速できない、失速してしまう、という声を聞きます。もし自分がそんな悩みを持っているとしたら、決して少数派ではないと思います。もちろん、このコーナーを読んでらっしゃる方は、そのことには満足していないと思います。

突然ですが、今日は皆さんに、独自の製法で調合した加速添加剤「ニトロ君」を注入します。今日からいきなりボトムターンで加速しちゃってください。

第6回第7回で徐々にラインを下方修正できた方もいると思うんですが、それだけでは、単に波のパワーゾーンから離れてしまっているだけです。やはり、そこからのボトムターンでどれだけ力を爆発させられるかがとても重要だと思います。

テイクオフから最初のボトムに達するまでの区間にスポットライトをあてて見てみると、パドルの速さやテイクオフの善し悪し、ボトムまでのライン取りなんかでも多少のスピード差は出ますが、やはり、何と言っても、一発目のボトムに差し掛かるまでに蓄積したパワーを、そこからのターンでいかに爆発させることができるかがサーフィンのスピードを決定付ける上で、とても大きな要因なんじゃないでしょうか?

では、早速ですが、ニトロ君を注入させていただきます。カウントダウン開始!「3、2、1、注入!」

1.まずは、トップから徐々にレールを入れながら、ボトムを目指します。

このとき、腰の位置が高いと、レールを入れて波側に身体を倒し込むことが難しくなります。下の絵を見てください。腰の高いA君と、腰の低いB君がバランスを崩して、同じ角度で同じ方向に倒れ込みました。リカバリに必要な移動量(赤い線)が小さくて済むのは、どちらでしょう?

もちろん、B君ですね。3メートルの棒が30度倒れる場合よりも、1メートルの棒が30度倒れた場合の方が、立て直すのが楽なのと同じです。

重心が低いということは、バランスが崩れたときのリカバリも早いですが、それだけではありません。レールを入れて同じ角度に倒し込む場合でも、重心の低いB君の方が、A君よりもより少ない移動量で早く所定の角度に到達します。それでいて、より安定しているのです。タイトなフォームでライディングするメリットがここにあります。レールトゥレールの切りかえの場合でも、考え方は同じです。ですから、波側に身体を入れてターンするときは、必ずヒザを深く曲げて重心を低く落とすようにしてください。バランスを保ちながら、より大胆に体重移動することができるようになります。

できれば、波のポケットに向けて下りて行きながら、徐々にヒザを曲げて行き、それに合わせるようにレールも徐々に入れて行って、ターンの最も深い部分(波のボトム)で、レールの入れ具合とヒザの曲げ量が最大になるようにしてみてください。そうすると、波に対して最もプレスをかけたいポケット部分で、ちょうど良く板にガッチリ荷重がかかると思います。

もし、波のポケットに向けて、この腰を落としていく動作がなければ、レールを入れるときに、身体を高い位置から倒し込むことになり、バランスがとても難しくなります。ただでさえ板は波と同時に下に落ちて行きますから、棒立ちになってしまうと、板に対する身体の接地感が弱くなり、不安定になります。重心を下げていく動作は、より板との接地感を高めるだけでなく、板に対して積極的にプレスをかけていくことで、より安定感を高めます。それによって、思い切って身体を波側に入れることが可能になるのです。

波の状況によっては、トップから徐々にヒザを曲げたりレールを入れたりすることが難しい場合もあると思います。テイクオフした波のバンプが大きかったり、フェイスが狭く一気にボトムに到達してしまうような波だったら、出だしから安定するように低い体勢で行ってもオッケーです。

2.ボトムに到達したら思い切りよく踏み込みます。

ボトムに到達したとき、もし波に十分なパワーがあってフェイスのコンディションが整っていれば、「1」で説明したように、ボトムの最も深いところで、ヒザが最も深く曲がり、身体が最も傾いていいて、レールを噛ませる量が最大量に達している状態になっていると思います。このような場合は、特に意識して「踏み込む」という動作をしなくても、波に対して十分なプレッシャーをかけることができていると思います。

ですが、おそらく皆さんが普段乗られる波は、このように、綺麗なボトムターンの姿勢に持って行ける波ばかりではないんじゃないでしょうか?バンプが大きく、急激にセクションが変化する風波でサーフィンする場合は、徐々にレールを入れることができなくても、とにかく体勢を低くして安定させ、無難にボトムに到達するだけで十分です。ボトムに到達したらそれまでに得たスピードを利用して一気に身体を寝かしこみ、レールを立てて、瞬発的に強く踏み込んで波にプレッシャーをかけます。

この、強く踏み込むというのは、一瞬ヒザを大きく、深く曲げて、腰の位置を低くするような動きです。この動きは地上でも出来ますから、部屋の中などで試してみてください。人によって、頭であったり、腰であったり、おしりであったりと、個人差はあると思いますが、とにかくヒザを大きく曲げることで、全身の重みを一気に板に押しつけるようなイメージでオッケーです。踏み込むことによって、瞬時に地面(板)にプレスがかかるのが、足腰の筋肉や足の裏にかかる負荷で感じられると思います。これに加えてレールを入れた状態をシュミレーションするなら、片手を壁について身体を傾けた状態を作り、グンと一瞬踏み込むようにすると、より波の上で行う動作に近くなります。フロントサイドのイメージなら足の裏の拇指球に重心をかけるようにし、バックサイドのイメージなら、かかとに重心をかけるようにします。頭でイメージしていることを、いきなり波の上でやるのはとても難しいので、陸上でのイメージトレーニングはある程度有効です。

波のトップに戻ることを急ぐあまり、十分な踏み込みをしないで、ノーズだけを上に向けようとするのは逆効果です。スプリングと同じで、大きく沈み込んだ方が、伸びの反発力は大きいのです。ですから、まずは、よりディープなところで下方向にプレスをかけることを覚えてください。波のコンディションが、どうしても長い時間レールを差し込むことに適さない場合でも、できれば一瞬はレールをフルに差し込んでください。その方が結果的に早くトップに到達します。

3.ターンからの飛び出しで加速します。

「2」までの動作がうまく行けば、ターンの後半では、沈み込んだ板が、板の持つ浮力と水からの反発で強い勢いで戻ってきます。この勢いは、踏み込む量が多いほど強くなります。ただし、踏み込む前にレールが立っていて、水に対して板がプレッシャーを与えられる形ができていることが大前提です。レールがガッチリと波に噛んでいないと、波に対してうまく力がかからなくなってしまいます。

ここで、トランポリンを想像して欲しいんですが、ヒザを曲げてグッと踏み込むと、全体重がトランポリンの布にかかって沈み込みますね?で、沈み込み量が最大になると、今度は強烈な力で戻ってきます。そのときに、普通はトランポリンの上にいる人間は、そのまま押し上げられるのを待っているだけじゃなくて、より高く飛び上がるために、今度は曲げたヒザを伸ばす形でマットに押しつけますよね?それと同じく、ヒザの曲げ量と板の沈み込み量が最大値に達し、板に反発が生じたら、今度は曲げたヒザを伸ばす形で、さらに板にプレッシャーを与えます。

表現が適切かどうか分かりませんが、板を押し込む、とか、蹴り出す、と言っても良いかも知れません。ただし、これはあくまで、この動作以前のヒザの動作がきちんとできてからの話ですので、まずは、ヒザを深く曲げる動作をマスターしてください。ヒザが十分に曲がっていない状態から、足を伸ばす動作に入ると、板に与えるプレスが軽いものになって十分な反発を得られないばかりか、バランスを崩して板から転落しやすくなります。イメージとしては、足の筋力を使って板を蹴りこむのではなく、全身の重みを下に押し下げることで、よりヘビーなプレッシャーをかける感じです。

波が小さい場合、トップから下りてくるだけではスピードもパワーも十分に得られないことがあります。そんな波でフルレールのターンをするのは難しいように思われるかも知れません。スピードが十分でない状況で身体を内側に入れると、遠心力とのバランスが取れずに倒れてしまうと思う人もいるかもしれません。ですが、上に書いたように、ヒザを深く曲げて一気に板にプレッシャーをかける方法を使えば、カービングとまでは行かないまでも、強いドライブターンをすることは可能です。

身体を倒し込んだときに遠心力を維持できるだけのパワーが波にないわけですから、波のパワーに依存することはできません。その分、自分が、より強く踏み込むことで、板と波に大きなプレスを与える必要があります。ただし、この作用は一瞬しか持続しないので、このときばかりは、レールが先で、踏み込みが後、とは言ってられません。踏み込みとほぼ同時に身体を倒し込んでレールを波に食わせます。ほんの一瞬の動作ですが、踏み込む間と、踏み込みが最大量に達してから蹴り出しが終了するまでの間はプレッシャーが持続するので、レールを噛ませても倒れたりしないでドライブターンをすることができるのです。ただし、レールを差し込んでいる時間は短時間になります。

最も波がデカマルのときなどは、踏み込んじゃうとパワーが強すぎて飛ばされちゃったりするので、低い姿勢を保ったままレールを入れるだけで十分なこともあります。また、波のパワーゾーンから大きく離れて深いターンをするなど、そのあたりは、臨機応変に対応しましょう。

さ、いかがでしょうか?基本的な原理は分かっていただけたかと思います。

実は、ここでは上体のリードなど、とても多くのことを省略しています。なので、ボトムターン全体の説明としては不十分なのです。また、ボトムターン直後の動作やターンのバリエーションについても、本当は色々あるんですが、もう書き出したらキリがないですし、読まれてる皆さんも、そんなに一気にはできないと思います。また、常にこの方法がベターということではないんですが、とにかく今回は、加速というものを体感していただければオッケーだと思います。

雑誌などでは、派手なトップアクションの写真が多く見られますが、そんな華々しいトップアクションも、全て力強いボトムターンから繰り出されます。皆さんもビデオやDVDで、プロサーファーが行う芸術的なボトムターンを見たことがあると思います。波の力、サーファーのポジショニングと板への入力、板の持つアウトライン、全てがシンクロしてパーフェクトなカービングターンが生み出されます。そんなターンを自分でもできたら、って想像してみてください.....どうです?もう、ウハウハですね?

最後に一つだけ、面白いサーフビデオの見方をご紹介します。トップライダー達のヒザの動きを観察する方法です。皆さんは、トッププロ達のヒザの動きを観察しようとするとき、ヒザ部分の曲げ具合だけをチェックしていませんか?スタンスの研究をするには、それでもオッケーなんですが、試しにヒザだけをクローズアップして観察するのをやめて、ライディング中のおしりと板の距離を追うようにしてみてください。ヒザの曲げ量が大きい時は、おしりと板の距離が狭くなります。この方法だと、ヒザ自体をチェックするよりも、どのセクションでどのくらいヒザを使っているのかを明確に把握できます。やってみてくださいね。

2005.3.8 ゴーゴー

 

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