第9回 上体のリードもやっちゃってみる?

 

前回の説明を実行してモモやフクラハギにこれまでにない筋肉痛を覚えた人も多いんじゃないでしょうか?オレのボードって結構パンチ力あったんじゃん!とか、ターンの伸びを感じられたぞ!という人もいるんじゃないかと思います。

ところで、今回は上体のリードについてお話ししたいと思います。テイクオフ直後から上体が横(フロントサイドだったら波側)を向いてしまっていることはないでしょうか?フロントサイドで乗る場合は、上体が横を向いてしまってもボトムターンはできると思うんですが、問題はフロントサイドのトップターンやバックサイドのボトムターンだと思います。では、実際にどんな問題があるのか検証してみましょう。

1.フロントサイドで上体が横(波側)に向いちゃっていたら?

トップターンのときに背中側に倒れ込むことになるので、思い切った体重移動が難しくなります。そうするとレールのセットが甘くなったり、ターンの回転半径が大きくなったりしちゃいますよね。

僕がまだトップターンをうまくメイクできなかった頃を思い出してみると、改善点は沢山あったんですが、最も大きな原因の一つは身体の傾け方とレールの入れ具合が足りなかったことだと思います。良くある失敗は、トップから波の裏側へ飛び出してしまうことや、何とかボードの向きだけは変わっても、全く加速できていなくて、波のトップで完全に失速してしまっていたことでした。

ビデオなどでプロサーファーのライディングを見てみると、トップターンでも強いドライブをかけて加速していきます。旋回だけが完了して、あとは板が波のパワーを受けて再びボトムへ落ちて行ってくれるのを待つだけでは、どことなくもの足りませんよね?

下の図を見てください。これは、当時の僕くらいの段階にいるサーファーが陥る典型的な「なんちゃってトップターン」の例だと思います。

念のため説明しておきますが、これは円盤に乗った宇宙人が波乗りしている図ではないんですよ。トップターンのときの、サーファーの身体の傾け具合を示しています。上の丸いのが頭で、下の円盤がボード(板が横に向いているところ)、中間の棒が身体です。

図1を見ると、身体が十分に傾いて、しっかりターンの体勢が出来ているように見えます。ところが、これを下の図2のように波の傾斜を仮に水平に戻してみると、どうでしょう。アラ不思議!ゼンゼンレールなんて入ってないじゃない!

そうなんです!これが「なんちゃってトップターン」の主要な原因なんですね。実際、波のトップで思い切り身体をターンの内側に入れているつもりでも、図2のように、実は大してレールを食わせていないことがあるんですね。普段陸上で暮らしている人間にしてみれば、十分に傾いているんですが、どうも傾斜の付いた波の上では十分ではないようです。

それでも板が面に対して水平になっただけである程度ルースにはなりますから、ノーズの向きだけはクルッと変わっちゃったりするんですね。ところがその後はスピードが完全に死んでしまって、再び波が板を押してくれるのを待っているしかない状態になっちゃうんですね。

これでは、せっかくボトムで爆発的なパワーを得ても、かなりもったいないです。なので、ボトムターンが終了したら、トップに到達する前の、できるだけ早い段階でレールを入れかえてトップターンに備えましょう。トップでもボトム同様にレールを噛ませて水にプレッシャーをかけたいものです。ボトムターンのようにレール全体を大きく使うことは難しいですが、水に対してエッジを立てるだけでもかなりの効果があります。うまく行けばトップで失速しないどころか、逆に加速します。それにトップでもえぐるようなターンって、格好良くないですか?スプレーだってジュバッと大きく飛びます。

DVDなどでプロのライディングをチェックしてみると、ボトムターンでもトップターンでも、ターン側の手が水に触っちゃうくらい豪快に身体を入れていたりしますよね。第8回で説明したように、重心を下げてターンに入れば、トップでも同じようにより強くレールを入れることができるので、やってみてくださいね。基本的には、第8回で説明したトランポリンの原理と同じことがトップでもできますから、うまく行けば波と板から得られる反発でグイグイ加速できます。

さてさて、話を元に戻しますが、いずれにしても上体が波側を向いてしまっては、背中側に倒れ込むのは無理があり、深くレールを入れるにも限界が出てしまいます。特にフロントサイドのトップターンでは上体のリードはとても大切です。

2.バックサイドで上体が横(岸側)に向いちゃっていたら?

一番の問題として、進行方向の状況が分かりにくくなる点があると思うんですね。リップの崩れ方やスピード、セクションの変化などを見極めないと、適切なラインが設定できないので、前方のピークが崩れてこようとしているのにボトムに下りちゃったり、逆にショルダーが緩やかなのにグイグイ前に走って行ってしまったりします。仮に首だけをねじればある程度は行く先を見ることはできますが、波を読むためにトップを見上げるとなると、相当妖怪チックなねじり方をしないと無理だと思います。そこまで気合いを入れて首をねじるんであれば、腰をひねった方が楽チンです。

それから、先ほどのフロントサイドのトップターン同様、バックサイドのボトムターンでも背中側に倒れ込むというのは無理がありますから、やはりある程度は腰をひねって上体を進行方向に向けておく方がベターかと思います。

いかがでしょうか?身体が横に向いちゃってると、波乗りはこんなに難しくなっちゃうんですね。

とは言え、人間の身体なので、機械のようにグリッと正面を向いたりはしないと思います。厳密に言えば、プロのサーファーだって上体は真っ正面に向いてるわけじゃないので、あくまで、自然な範囲で次の動きに対応できる姿勢を作っておこう、ということで良いんじゃないでしょうか?

 

[上体をリードする実験]

さてさて、ここまでは主にターンに入る前の上体のあり方について説明してきましたが、ここからは、上体をリードするとどんな効果が得られるかを実験してみたいと思います。

まず、いつもサーフボード上で取る姿勢を部屋の中で(別に外でもオッケーです)取ってみてください。その姿勢でフロントサイド、バックサイドそれぞれのボトムターンやトップターンをイメージしながら腰をひねって上体をターン方向にリードしてみてください。板の旋回に先行して上体を回転方向にひねるような動作です。ヒザの屈伸を使って腰を上下に移動したり、かかとや拇指球に重心をあずけてレールを入れるイメージで、よりリアルにやってみてくださいね。

オッケーですか?では、再度、これと全く同じ動作をやってもらうんですが、今度は前足の裏と後ろ足の裏にどのようなプレッシャーがかかっているかを意識しながらやってみてください。

どうでしょう?多少の個人差はあるかと思うんですが、前足と後ろ足に良い具合に板を旋回させようとする回転力が加わっていませんか?特に回転力を加えようという意識を持たなくても、ごく自然に回転力が加わっているのが分かると思います。

試しに腰のひねりによる上体のリードをやめて、単にレールだけを使ってターンする動作も試してみてください。どうでしょう?足の裏に感じられる回転力は、上体のリードがある場合に比べてかなり弱くないですか?ヒザを動かすことで板に対してある程度のプレッシャーはかけられますが、回転力は十分ではないと思います。逆に腰のスナップを「オリャッ!」と強く入れてみてください。つられて下半身が旋回方向に持って行かれるくらいの強い回転力が得られると思います。

それでですね、じゃあこの強いスナップは、ライディング中のどこで入れたら良いんだろう?ということになると思うんですが、第8回で説明したように、腰を落としながらレールを入れていって、板の沈み込みが最大になったところで、強いひねりを開始すると良いと思います。ちょうどターンの前半と後半の中間部分の、踏み込みが最も大きくなったところですね。ここで、トランポリンの原理で伸び上がりながら、同時にグリッと上体をターン方向にねじると効果的だと思います。

トップターンの場合は、ボトムでひねった上体を戻しながらレールを切り替えます。トップの最も強く旋回したいセクションの直前で上体のスナップを入れます。

この動作を入れるか入れないかで、ターンのキレは格段に違ってきます。上で説明したように無意識のプレッシャーが足の裏にかかるので、板を旋回させる量が大きくなりますし、「無意識の」と言ってもかなりのパワーが後ろ足にかかるのでボトムでのドライブ力が増大し、トップでもスプレーの飛び方が大きくなります。

このとき、必ず上体のひねりを入れる前にレールをガッチリ噛ませておいてくださいね。そうしないと、上体のスナップによって生じたパワーが効率よく下半身と板を伝わって、水に伝達されません。レールを入れることによって、ボードがより大量の水を受け止めることができるようになります。その上でサーファーがしっかりと体重移動をしたり、強い荷重をかけてあげることで、レールが抑えている水に対して大きなプレッシャーをかけることができます。これが強い飛び出しの力であったり、旋回力になるわけです。

よく板の向きが変わっていないのに上体だけグリグリ左右に振っている初心者の人を見かけます。努力は良く分かりますが、見た目はダサダサです。自分が板の搭乗者なので、板に乗せられることなくしっかりコントロールしましょう。そのためにも旋回に入る前に必ずレールを入れることが大切です。

それから、足の裏に回転力が生じる、と言っても結果的にそうなることなので、上体をリードすることなく足だけの動きで無理矢理板をねじるのはやめた方が良いと思います。上半身と下半身がチグハグの動きになって、ライディング中のバランスの軸が崩れてしまいますし、うまく乗れたとしても、たぶん、ハタから見ていると、かなりイカレたスタイルになっていると思います。

余談になりますが、僕は実際にビーチで、ほとんど全く身体が横に向いてしまっているのに、バックサイドでバコンと当てている人を見たことがあります。上体は岸側を向いているのに背中のピークに当てているわけです。「あ〜、できるもんなんだ〜」と感心したものでした。

ま、極論すれば、自分が満足してれば何だって良いんですよ。人がとやかく言うことじゃないんですよね。別に誰かに迷惑かけてるわけじゃないしね。でももし、このコーナーを読んでみて、自分のフロントサイドのトップターンやバックサイドのボトムターンで何か思い当たることがあれば、試しにトライしてみる価値はあるかも知れません。案外、収穫は大きいかも知れませんよ。

2005.3.20 ゴーゴー

 

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